第1回アサギマダラ探し
2015.5.24

 5月も後半を迎え、いよいよアサギマダラ探しを行う日が来た。春先からこれまでは近場での蝶の調査が中心だったが、生物部の活動のメインのひとつであるアサギマダラ調査スタートだ。

 だが、今日の参加部員はJ君のみ。ちょっと残念だが仕方ない。それぞれ「親戚の田植え」とか「学校で補習」とか「テストが近いから勉強」とか理由がある。次回以降の調査で活躍してほしい。

 アサギマダラ調査で今日のように松前、上ノ国方面に行くときは朝が早い。今日も出発は朝6時半。対馬先生、J君に加え道南虫の会の安井さんも同行。私の家に集まってもらって、CX-5で松前方面に向けて出発した。

 対馬先生が、「車のトリップメーターを0にしろ」とか、「燃費計をリセットしろ」とか、「行き先をナビに入れるぞ」とか、色んなことを言ってくる。言われた通りにトリップを0にし、燃料計をリセットした。多分、今日どれくらい走るかとか、CX-5の燃費の実データを知りたいのだろう。

 普段自分は燃費は気にしないことにしている。CX−5の燃費はカタログで18km/lだったかな?ディーゼルエンジン(軽油)でこれだけ走れば問題ないだろう。しかも少しでも燃費を良くしようと気を使って走ったら運転が楽しくなくなる。
 まぁでも久しぶりに燃費がどの位いくか、挑戦してみようと思い、かなり気を使っての運転になった。

 海岸線を松前に向かって走る。天気は快晴だが風がかなり強い。海の波も白波が立っている。どうやら西風のようで、西風だと松前を越えてからも強風であることが予想でき、これは条件的には厳しいかなと思いつつ運転した。

 J君は昨夜寝るのが遅かったらしく、また車酔いする体質らしく、酔い止めを飲んできたと言い寝ていた。

 順調に松前を通過。更に進んで館浜という地区に到着。最初のアサギマダラ捜索ポイントだ。
 運がいいのか風はほとんど止んでいた。ただし波はけっこうある感じ。

館浜に到着

 今年の春に卒業した旧部長の山下君が九州の姫島と言う所でかなりの数のアサギマダラにマーキングして放したという。
 先週は200頭だって。

 かなり確率は低いが、山下君が九州の姫島で放したアサギマダラを北海道で捕まえられたら凄いだろうな〜と思っていた。今日だって可能性は0ではない。(0.00001%位だろうけど)

 館浜に降りてまずはスナビキソウを探す。ポツポツ咲いているけどまだ咲いていないのも多い感じ。

館浜のスナビキソウ

 アサギマダラの姿が見られないのでJ君とビーチグラスを探してみた。ビーチグラスと呼べるようなものはほとんどなく、ただのビーチに落ちているガラスの破片はたくさん見つけた。

 これが波にもまれ、砂や石に削られてビーチグラスになる。

ビーチのガラス。
ビーチグラスと呼ぶにはまだまだ熟成不足

 更に少し歩きながらアサギマダラがいないかどうか調べたけど、残念ながらアサギマダラの姿は見られなかった。もう少しスナビキソウがたくさん咲く時期になった方が確率が高そうだ。

 20分位でこの場所を諦めて次のポイントに向かう事にした。次のポイントは対馬先生が「プライベートビーチ」と呼ぶ場所だ。
 「俺はこのプライベートビーチのオーナーだから、一緒に写真と撮ってくれ」というので、1枚撮影。
 ちょっと顔が笑いそうになっているのが可笑しい。

プライベートビーチとそのオーナー

 昨年もこのビーチでアサギマダラの捜索を行ったが、その時は凄い数のドクガの幼虫がいて恐ろしかった。

 今年もドクガの幼虫いるかな?と思ったけど、やっぱりドクガの幼虫がいた。

ドクガの幼虫

 このドクガの幼虫、かなりたちが悪い。
 写真を見ると、毛のようなものが生えているのがわかるが、毒があるのはこの毛ではないらしい。皮膚から生えている目に見えないような小さな毛。これを毒針毛(どくしんもう)というのだが、これが幼虫の皮膚から離れてフワッと舞って人間の皮膚を刺す。すると赤い発疹が出て痒くなるようだ。なので直接このドクガの幼虫に触らなかったとしてもやられてしまう。

 運よく直接皮膚に刺さらなかったとしても、服などに付いて、後から発疹が出たり、場合によっては知らないで洗濯機で他の衣類と一緒に服を洗うと、他の衣類に毒針毛が付いて、それを着た人がやられる事もあるようだ。

 対馬先生は「ドクガの幼虫の写真を撮っておけ」と言うので、嫌だなぁ〜、近づきたくもないんだけど・・・と思いながら、仕方ないので撮影した。
去年ドクガの幼虫にやられた対馬先生の手と足の様子(今はもちろん治っている)

 プライベートビーチを後にして、次は大安在という地域に向かった。ここは一番期待できるポイントだ。

 だが、風が強まってしまい、更にスナビキソウはまだ小さく、残念ながらアサギマダラが来ている可能性は0だった。

数年前アサギマダラがたくさん見られたという場所のスナビキソウ。まだ小さく咲いていなかった

 しかし、ここにはアサギマダラがいなくても楽しめるものがある。それは石だ。

 どういうわけかここには平べったい石がたくさんあり、対馬先生はそれを集めている。形の良い左右対称の楕円形の平べったい石を何故か自宅の階段に置いている。

対馬先生の自宅の階段(玄関のところ)に置かれている大安在産平べったい石

 大安在はアサギマダラがいなくても楽しめると書いたが、実際楽しいのは平べったい石集めをしている対馬先生だけだ。対馬先生もみんなに平べったい石を集めた方がいいよと誘っているが、安井さんもJ君も私も別に平べったい石に興味は無く、一応探してみて形の良いものを見つけたら対馬先生に差し出す。「どう?」って。

 「これはダメ」「これは形はいいけど石の表面がボソボソしている」と、せっかく拾った石をどんどんブン投げられる。
 たまに「合格!」と言われると何故かかなり嬉しい。

 去年は現部長のI君が対馬先生採集の石を持ち運ぶ係りをやらされていたが、今年はJ君が石を持たされていた。けっこう重たい石を砂浜で持ち歩くと、砂浜に足が埋まるので歩くのがけっこう大変なのだ。J君、頑張って運んでいた。

大安在の平べったい石が落ちている場所

 自分は砂浜の浪間で写真を撮ったりして遊んでいた。どこかで見たことのあるような絵のような感じで写真を撮ってみた。

題名「刻 2015」


大安在で平べったい石を探す3人

 J君は今日は他に部員もいないし、いつもの感じで蝶を探しに行くと思ったら車で長距離移動させられ、しかも何故か山ではなく海。更に蝶は飛んでいないときたら、いつものようなテンションにはなれないようだ。しかも昨日寝たのが遅かったらしく、眠そうにしていた。

流木に座るJ君

 浪間の写真を撮影した後、自分はビーチグラス探し。しかし全然落ちていない。

これからビーチグラスになるかもしれないビール瓶

 今日は残念ながら海でアサギマダラを見つけることは出来なかった。しかしまだ今年1回目。いなくても仕方ない。むしろ、いないだろうなと思いつつ捜索に来ているので、悔しさもない。

 次に上ノ国石崎の林道に行く事にした。ゴマダラチョウのポイントなどで蝶の観察をしたが、オナガアゲハが多いと言う場所などでも、黒いアゲハは全く見られない。更に蝶自体が少なかった。

 気を取り直して次の林道に向かう。安井さんもJ君も私の揺りかご運転走法によってスヤスヤお休みになっていたので対馬先生に写真を撮ってもらった。

寝る安井さん

 上ノ国のもうひとつの林道に向かう前、去年も立ち寄った勝山館の麓にある上ノ国八幡宮の宮司さんに挨拶してこようという事になり、立ち寄った。
 宮司さんは笑顔で出迎えてくれ、案内をしてくれた。

 去年ここに来た時には対馬先生と宮司さんが何やらここら辺の歴史について難しい話をしており、何のことかさっぱりわからなかったが、私も「はこだて検定上級」に合格したので、この辺の地域についても随分勉強してわかるようになった。はこだて検定のテキストが今年新しくなり、この辺りの歴史についても更に詳しく書かれていたので興味津々で見学させてもらった。

 ここには上ノ国八幡宮に加え、有名な上國寺、笹浪家住宅がある。

上國寺

 このお寺の開基は1443年と伝えられている。本堂の天井に「宝暦寅八年」と書かれている墨の文字があり、また、昭和4年に修理をした際、板札に「〜〜宝暦七年〜〜」と書かれている事、虹梁の彫刻の模様が18世紀頃に普通に用いられているものであることから、宝暦七年か八年(西暦1757〜1758年)に建立したものと考えられている。
 最初は真言宗に属していたが、江戸時代中期に浄土宗に改宗されている。
 国の重要文化財に指定されている。

 そしてここには北海道で一番大きいと言われているエノキがあり、最初どこにあるのかもわからなかったが、宮司さんが教えてくれた。

北海道で最大のエノキの木らしい


上ノ国八幡宮

 上ノ国八幡宮は文明5年(1473年)に武田信広と言う当時この辺を牛耳っていた人が勝山館(この八幡宮の裏山の上にある山城)に館神として創った神社である。
 本殿は元禄12年(1699年)に建立されており、北海道最古の神社建築だが、現在その寺社を覆うように建物があり、一般には公開していないという事だった。
 本殿は町指定有形文化財に指定されている。

旧笹浪家住宅

 この笹浪家住宅は北海道で現存する住宅においては最古のものと言われている。
 にしん漁を営んでいた家で、石川県から上ノ国に渡ってきたと伝えられている。この家の人は代々、久右衛門という名前を使っていたようで、この住宅は五代目の久右衛門が建てたと言われている。
 19世紀の初期に建てられたようで、家に使われている木はヒバが使用されている。当時の松前藩では勝手にヒバを使うと罰せられる位高級なものだったらしいが、そういうものを使って当時としては豪勢な家だったのだろう。

 屋根もヒバが使われているが、風などに飛ばされないように、重しとして石がたくさん置かれている。また、西から吹く強風(タバカゼ)対策で、正面から見える屋根の方が裏側にある屋根より大きく、タバカゼを正面から受けた時に、うまく裏山方面に受け流すような工夫も見られる。
 国指定の重要文化財である。

資料館をのぞき見する安井さん

 去年ここの宮司さんと初めてお会いして話をした時に、アサギマダラのことについてや、エノキを食樹とするゴマダラチョウ、オオムラサキの事についても説明していた。
 宮司さんはその事を覚えていたらしく、「去年八幡宮にゴマダラチョウがいて、網で採って写真を撮ったので見せてあげる」と言う。これにはびっくり!

 ゴマダラチョウがいて写真撮ったの!?

 宮司さんが見せてくれた写真に写っていたのはゴマダラチョウではなく、アサギマダラであった。名前を勘違いしていたのだと思う。更に、マジックでマーキングしようと思ったが、どうやればいいかわからず、そのまま逃がしたという事だった。

 去年ぷらっと訪れた対馬先生と私にお茶を出してくれて、蝶の話を聞いてくれて、その後実際にアサギマダラを採集し、マーキングの仕方はわからなかったが写真に納めて、次に自分たちが来たら見せてあげようと思っていてくれたことがとても嬉しかった。採集日は去年の8月14日ということで、写真のアサギマダラも新鮮だったことから春に本州から渡ってきたアサギマダラがこの付近で産卵し、それが孵化して成虫になったものだろうと考えられる。しかし、これだけ標高の低い場所で8月にアサギマダラが見られるのは珍しい事だと対馬先生は言っていた。貴重な記録となる。


上ノ国八幡宮の道路を渡って向かい側にある駐車場から
水平線の所に見えるのは江差のカモメ島だろうか

 ここではツマキチョウやトラフシジミなどを確認することが出来た。
 宮司さんと別れ、我々は苫符林道に向かった。
 去年だかにこの林道入り口付近で、シャクという花に大量のアサギマダラが来ていたというので、もしかして今日も見れるかもという事と、林道にいるであろうたくさんの蝶の観察を兼ねて。

 林道入り口に車を止めるとシャクはかなりの数咲いていた。独特の花の香りも辺り一面に広がっている。だがアサギマダラの姿は無く、スジグロシロチョウ、サカハチ、ルリシジミが多い感じ。
 4人で林道を歩きながら蝶探し。自分はアサギマダラは半分以上諦めていて、黒いアゲハがいないかなと思っていた。しかし、林道を進むにつれて蝶の姿はだんだん少なくなってきた。

 分かれ道のような場所があり、J君と安井さんペア、私と対馬先生ペアの二手に分かれて蝶の調査をすることにした。
 対馬先生は蝶ではなく大きなカタツムリを発見していた。

カタツムリ

 林道を少し進んで、対馬先生はゆっくり戻るという。自分はもう少し林道を進んでみようと思った。林道を進むとJ君と安井さんペアが進んでいた道に合流したので、3人で蝶を探したがあまり見られず、林道を戻ることにした。そして、対馬先生がいる場所まで戻ると、対馬先生は一人の時、クロヒカゲらしきものと、黒いアゲハを1頭ずつ目撃したと言っていた。

 黒いアゲハは遠すぎて種類はわからず。クロヒカゲっぽいものも「多分クロヒカゲだと思う」という事だったが、100%とまでは言えないらしい。
 それじゃぁクロヒカゲ探しでもしようかという事になった。もしかしたら再早記録かもしれないという事で。
 また二手に分かれて探した。今度は対馬先生とJ君ペア、私と安井さんペアだ。

 私と安井さんペアはクロヒカゲと思われる蝶が飛んで行った方向の道を歩いてみた。すると、本当に葉っぱの上にクロヒカゲが止まっていた。
 ちゃんと確認も出来た。正真正銘、1000%クロヒカゲだ。
 安井さんは私より前を歩いていたので、とりあえず写真に収めようと思いカメラを出している所でクロヒカゲは飛んでしまった。
 「クロヒカゲいた〜!」と叫んでみんなに知らせたのだが、残念ながらその後発見することは出来なかった。
 目撃記録だけでは証明できないので正式記録とは言えないが、自分はこの目ではっきりとクロヒカゲだと確認できた。
 ちょっと残念な気持ちもあったがしょうがない。林道を戻り帰ることにした。

 帰る途中、またもやドクガ発見。今度はさっきより大量に群れている。

ドクガの蝶中の群れ

 車まで戻る最中にはカエルが登場。対馬先生が「もしかしたら新種かもしれないので撮っておけ」と言い、写真撮影した。

新種かもしれないと対馬先生が言ったカエル
まさかね!

 ここでは蝶の方ではスジグロシロチョウ、ツマキチョウ、エゾヒメシロチョウ、アカタテハ、サカハチ、コミスジ、ルリシジミ、トラフシジミ、クロヒカゲ、ミヤマセセリを確認することが出来た。

コミスジ


サカハチ


シャクに止まるナナホシテントウ

 今日の調査はこれにて終了となった。この林道からは峠を木古内に抜けて函館に戻るルート(最短距離と思われる)で帰った。

 帰りの車の中では対馬先生が持参したはこだて検定の新テキストで問題を出してもらったり答えたりしていたが、J君と安井さんは後部座席で就寝。対馬先生も時々頭をガックンガックンさせていた。
 運転している私も、昨夜は1時過ぎに寝て、今日は6時半には出発。けっこう疲れていたようにも感じたので、車内で全員寝られると、自分も眠たくなってやばいかなと思ったんだけど、思いのほか眠くならなかった。

 自宅に戻って車のメーターを確認すると、今日の走行距離は253km、燃費は最終的に22.4km/リットルだった。
 250kmも走ったけど、使ったガソリンは11リットル位。1リットル100円換算でも1100円分くらいだね。これはかなり満足できる結果だと思う。しかも大人4人乗って+石の重さの燃費だし。

CX−5のメーター

 250kmと言えば函館から札幌位だろうか。これを11リットルの燃料で4人で考えれば、一人300円位で札幌に行けるという計算になる。

 第一の目的だったアサギマダラは見られなかった。黒いアゲハも対馬先生が1度目撃しただけ。クロヒカゲはチャンスがあったけどダメだった。
 凄い成果は得られなかったが、いないならいないで「いない」という調査結果を得られたと思うので、それはそれで良しと考えることが出来る。

 今年はアサギマダラがどの位北海道で見られるか楽しみである。