アサギマダラの卵発見!
2015.5.30


 今日は部員は全員不参加(テストが近く部活動禁止のため)で、対馬先生と私の二人での活動となった。

 今は自分も対馬先生も生物部の顧問という事で、普段は部員を連れて蝶の調査などの活動をしているが、時々今日のように二人での活動となる。
 ご存じのとおり、自分が高校生の時は私が生物部の部員で、対馬先生は当時から顧問だったのだが、何故だかわからないけど対馬先生と二人での活動になると、今でもどうも自分が生徒の頃に戻ったような、なんか変な感じがする。

 今日の活動では春の調査で入ることが出来なかったガビノの林道に入ってみようという事になった。ここ数日でアサギマダラの目撃情報も入ったりしていたので、通常の蝶の調査+アサギマダラ探しと言う感じで。

 対馬先生のジムニでガビノの林道に入った。入ってすぐに黒いアゲハ発見!
 飛んでいたので定かではないが、オナガアゲハにも見えた。だけど確証は全然ない。カラスアゲハと言われればそうかも・・・って感じ。
 車を降りて追いかけようとしたがどっかに飛んで行ってしまった。

 更に少し進むと林道上に越冬のタテハとスジグロシロチョウのちょっとした集団があった。

越冬タテハとスジグロシロチョウ
奥にはシータテハかな?

 ここを過ぎると蝶があまり飛んでいない感じになった。風もそんなになく天気も良く気温も20度を超えている感じで、蝶がたくさん飛んでいてもよさそうなんだけど。
 スジグロシロチョウ、サカハチチョウ位だっただろうか。

 林道に入る前、対馬先生が、「林道の途中で神社みたいのがあって登って行く場所があるから行ってみようか?」と言っていた。「それは車じゃなくて足で登るの?」と聞くと、「そうだ」と答えた。
 ちょっと嫌な予感がしたので、「どの位かかるの?」と聞くと、「5分位」と。

 5分位なら別にいいかなと思ったけど、対馬先生のことだから、多分短めに言ってるだろうなとは思っていた。10分位かかるのかな?感じ。

 林道を進み、その神社みたいな所に到着した。丸山龍神宮と書かれている鳥居があった。

 対馬先生が「登ろうぜ!」と元気そうな感じで言ったので、ちょっと吹き出してしまった。

丸山龍神宮の鳥居

 ここから5分か10分登山するんだなと言う感じだった。
 鳥居の横に何やら書かれていた。

注意事項が書かれている

 要約すると、刃物とタバコは神様が嫌いなので持ち歩くな。植物は採るなという事。

 これは管理する人が、山火事にならないようにと、付近の植物を荒らされたくないから、神様が嫌いとか何とか理由を付けて書いたんじゃないの?と思った。
 対馬先生はこの看板を読んで、持参していたカッターを車の中に置きに行っていた。注意事項を守って偉いと思った。自分は両方とも持っていなかったのでそのまま登ることにした。

 そして、山の方にある祠か何かを目指して出発した。

鳥居をくぐって出発

 けっこう坂がきつくて、手摺が付いていたり、ロープが張ってあってつかまって登るような所があったりしてすぐに汗をかいてきた。
 登り始めてからしばらくは草が刈られていて整備されており歩きやすい感じ。
 でも、これって草刈りで刈ったんだよね?神様、刃物嫌いなんじゃないの??登山道だけは刃物使って植物切っていいの??
 疑問を抱きつつも登りがきつくて疲れてきたので考えるのをやめた。

草が刈られた道を登る対馬先生

 途中には熊よけのための鐘みたいのもあったけど、錆びついていた。

熊よけの鐘みたいの。アポイ岳登山道にもあったのを思い出した。

 だんだん道が狭くなって森のような所を登って行く感じになったりして、しかもどう考えても5分は過ぎているし、10分位はたっている。それなのにゴールが見えない。もう汗だくでハァハァだ。
 鳥居の所に杖みたいのがあって、それを使って登って行ったのだが、これが意外と役に立ったかもしれない。

疲れながら登る私(対馬先生撮影)

 体感的には20分位はかかったと思うが、ようやく祠のところに到着した。汗でビチョビチョ。

祠?の所に到着した対馬先生

 更に少し上に行く道があり、対馬先生は探検に行った。自分は汗だくなのでここで休憩していることにした。休憩しながら足元を見るとダニが付いていた。
 おっ、ダニだ!と思って処刑した。
 すると、ズボンや手のところに次から次へとダニ発見!全部で9匹も処刑するはめになった。もしかしたらまだどっかに付いているかも。

 上の方の探検に行っていた対馬先生も降りてきて、下山することにした。対馬先生にはダニが全然ついていなかった。登りの時間はわからなかったが、下りの時間は計ってみることにした。

 坂がきつくて滑りそうになるのである程度ゆっくりだったが、それでも登りよりは倍位早いだろうと思う。そして車の所まで戻ると、12分だった。ということはやはり登りは20分位かかっているはずだ。
 5分って言ったのに!!

 標高差は対馬先生の腕時計の標高計で計測したら130mだった。

 車に戻り、汗だくだったのでタオルで拭いたり、背中にタオルを入れたりして出発。林道を更に進んで行ったが面白い蝶もいなくて、遂に海側に出てしまった。戸井のあたりに出たようだ。

 これからどうしようかという話になり、対馬先生は汐首の林道というか、以前何度も行った、頂上に野生の馬がいる道に行ってみようかと言った。頂上までではなく、200mか300m位歩いて、最早記録の蝶を見つけようと。自分は鉄山の林道に行ってみたいと言った。鉄山の林道は何故だかわからないけど面白い事が起こるから。オナガアゲハとか、それこそ何か最早記録の蝶が見られるかもしれないと思って。

 海を見ながら車を函館方面に進めていると、水平線の方に何か黒っぽくて四角い島みたいのが見えた。だけどそこに島は無いはず。それなら蜃気楼か何かかな?と思って対馬先生に言ってみた。
 「何か変な黒っぽいものが見えるけど、蜃気楼かな?」「何かの島じゃないよね?」と。

 対馬先生は「そんなところに島があるはず無いべや」と言った。確かにそうだ。そして「船じゃねぇの?」と言った。

 まさか、あれが船なら相当でかいよ。と思った。

 とりあえず、走る車の中から望遠レンズで撮影してみた。肉眼では全く見えなかったけど、撮影した写真を確認したら何やらローマ字が書かれていた。やっぱり船だったのか!!

水平線に浮かぶでっかい船

 車を走らせている途中、対馬先生が対馬先生自身の首にダニが付いているのを発見。自分で取ろうとしたらポロンと落ちて対馬先生のシャツの中に入ってしまった。
 「あっ、首の中に入って行ったよ!」と言うと、慌てて車を止めて、車から降りてダニを探した。そしてダニを発見し、逃がしてあげていた。自分はダニを見つけたら殺しちゃうんだけど、ダニすら逃がす対馬先生。去年はオオスズメバチを逃がしたし、心優しい。

 またここら辺には船入澗というのがある。昔、漁で獲ったイワシをためておく場所で、今は使われていないけど、その名残だ。

船入澗

 石垣のようになっているところがその名残だと思われる。海の水がとても綺麗で、当時もきっと美味しい新鮮な魚がたくさん獲れたんだろうなと思った。こういう遺構が残っているのも素晴らしい事だ。

コンブ?


旧戸井線のアーチ橋

 汐首のポイントに到着し、歩き出してすぐにクロヒカゲを発見した。自分はカメラだけ、対馬先生は網だけを持っていたのだが、自分は対馬先生よりちょっと先に進んでいたのですぐに「クロヒカゲいた!」と呼んだ。

 対馬先生は「どこよ!」って言って、坂を走って登ってきた。

 「あそこらへんに飛んで行った。まだいるかもしれない」と言うと、すぐにまたクロヒカゲが飛び出した。

 対馬先生は何度かクロヒカゲを見失いながらも網をブン回した。しかし結局逃げられた。自分も写真を撮ろうかなと思ったけど撮れなかった。

 でも、クロヒカゲはまたすぐに出てきた。そして結局対馬先生の網の中に納まった。暫定の最早記録である。
 (今年、すでに記録更新されている可能性も高そうなので暫定と書いた)

 対馬先生は「悪いね、ヌハハハハ!」と笑いながら言った。

 なんで悪いねと言ったかというと、写真撮影でも採集でも、先にやったほうが最早記録保持者になるからだ。
 自分は別に、自分の名前を残したいというのは全くなく、生物部として今年どれだけの種類が最早記録更新できるかというのに興味を持っているので、先に対馬先生に採られても、そんなことはどうでもいい。暫定であるが、記録が1種増えたことの方が嬉しかった。

対馬先生に採られたクロヒカゲ

 これは証拠写真だけ撮って逃がすことにした。その後も何度かクロヒカゲを見ることが出来た。先週も上ノ国で、採集も撮影も出来なかったけどばっちり目撃しているので、1週間たってかなりの数が羽化しているんだと思う。

 汐首での成果と言えばこの位だった。

 汐首のポイントを後にして、最後は鉄山の林道に行く事にした。

 いつもは山側から林道に入るのだが、今日は海側から林道に入った。蝶の姿は少なく、今日の鉄山はダメかなぁ〜と思った。

 イラクサだらけの場所があり、いったん降りて、アカマダラとかの幼虫がいないか軽く見たが何もなく、去年とおととしにアサギマダラの幼虫を発見した場所に来た。

 イケマのような植物が見えたので、対馬先生が車を降りて偵察。
 するといきなり、「卵あった〜!」と叫んだ。

 え!卵!?と自分も降りて、見せてもらった。イケマの葉の裏に小さな卵がついていた。

イケマの葉裏についていたアサギマダラの卵

 うわ!マジだ!!とびっくり。対馬先生もびっくり。
 まさかもうアサギマダラが卵を産んでいるなんて思わなかったから。

 同じ弦のイケマであと2つ、合計3つの卵が確認できた。

 対馬先生はアサギマダラが北海道に渡ってきてから交尾をして産卵している可能性が高いと思っていたらしい。実際、北海道内でアサギマダラが交尾している写真も撮られているようだ。

 今日アサギマダラの卵が見つかったという事は、交尾してから産卵まで数日あると考えると、本州で交尾したメスが北海道に渡ってきてから産卵しているという可能性も考えられる。いすれにしても5月に北海道でアサギマダラの卵が見つかったのは初めてなので、貴重なデータと言えると思う。

アサギマダラの卵アップ


見つけた卵の写真を撮っている対馬先生


3年連続でアサギマダラの産卵があった場所

 それにしても、ただでさえ少ないと思われるアサギマダラの北海道における産卵場所として、3年連続で同じ場所のイケマでの産卵が確認されたのは、単なる偶然なんだろうか?アサギマダラが本州から渡ってきて、この場所に産卵したくなる何かがこの場所にはあるのかもしれない。

 卵〜成虫までの成長を記録するため、1つだけ卵を持ち帰った。

 鉄山ではいつも何か面白い事があると思っていたが、まさかアサギマダラの卵が、しかも3つも確認できるなんて、対馬先生は「大ヒット」と言っていたが、自分にしたらホームラン級の出来事だと思った。

 この運の良さは下の時計のおかげかもしれない。

今日はめていた時計

 この時計、別に高い時計ではないのだが、黒いベルトに内側は赤。中の針は青、細い針は赤。5分刻みの所には黄緑色がついている。
 実はこの時計の色、アカエリトリバネアゲハ色なのである。そこが気に入って買った時計。今日のラッキーアイテムだったのかもしれない。