フジミドリシジミ撮影成功!
2015.7.12


 目覚まし時計は朝5時に鳴るようにセットして寝たのだが、5時少し前には目が覚めた。いよいよフジミドリシジミ撮影チャレンジの本命の時間帯になった。
 妻と二人で旅館を出ると、無銭飲食、無銭宿泊だと思われそうなので、旅館には妻を残し自分一人でポイントを見に行くことにした。
 旅館の朝食の関係で7時頃には戻ってこなければならないので、移動時間を含めて実質2時間くらいの勝負である。

 昨日の下見の結果、期待は薄いと感じていたので思ったほどテンションも上がらず、「ダメだろうなぁ〜」と思っていた。
 ポイントに到着するまでの間でさえ、蝶の姿は1頭もなし。朝5時だからしょうがないか。

 教えてもらったポイントは山の影になっており、陽が差してくる時間は遅そう。朝露でベチョベチョに濡れていた。

 車を降りてとりあえずフジミドリシジミを探すが案の定見当たらない。代わりにカタツムリがやけに多かった。

カタツムリ

 フジミドリシジミを観察したのは早朝のフキの葉裏だというので、フキの葉をめくって探すが全くダメ。

 やっぱりダメかぁ〜・・・。と思いながらも車から捕虫網を出して、網の部分だけを取り外し、ただの棒にする。これを伸ばして草や木の枝をポンポンと叩きながらフジミドリシジミが飛び出さないか探した。

 すると、1頭のシジミチョウらしきものが飛び出した。

 おおっ!フジミドリ、遂に発見か!!?と思って飛び出した蝶を見ていると、草の中に降りた。慌ててそこまで行き蝶を探す。

 残念!ミズイロオナガシジミでした・・・・。

ミズイロオナガシジミ

 普段この蝶を見つけたら喜んで撮影するんだけど、今日はもっともっと難易度が高そうな蝶を目的にしているので、はっきり言ってミズイロオナガシジミも雑魚だ。

 だけど確実にフジミドリシジミに近づいたような気がした。だって、昨日はヒメウラナミジャノメとコキマダラセセリ位しか見えなかったのだから。

 ミズイロオナガの写真撮影をしている場合じゃないなと思い、早々にフジミドリシジミ探しに戻った。葉っぱに三角っぽいものが付いていると、一瞬「おっ!?」って思うが、フジミドリシジミではない。

一瞬フジミドリシジミかと思った蛾の羽?食べられたのか??



 林道わきのどこを探してもフジミドリシジミが見つからない。しょうがないので林道脇から入れそうなところを探して草をかき分けて入って行った。もう朝露のせいでズボンもベチョベチョ。

 蝶は全然いないけど、カタツムリはやたら多かったし、黒っぽいのも見つけた。白いのと種類が違うんだろうか?

黒っぽいカタツムリ

 フキの葉にカエルがいた。カエルだけに「もう帰れ!」と言われているような気がして、時計を見たらそろそろ旅館に戻らなければならない時間になっていた。

 このポイントを教えてもらったけど、情報としては10年くらい前だというし、もうフジミドリシジミはいなくなってしまったのかな?それとも今年は蝶の数が少ないのでフジミドリシジミもかなり少ないのか、そもそも成虫の発生時期を間違えたのか?(10年前に観察したのは7月16日だったそうだ)

カエル

 留寿都でオオイチモンジ撃沈。島牧でフジミドリシジミ撃沈。今回は時間とお金をかけた割に成果が無かったなぁ〜。だけどこんな日もあるさ!などと思いながら旅館に戻った。旅館に戻るまでの道もなかなか自然にあふれている感じだったので、朝食を食べたらチェックアウトして旅館周辺の蝶でも観察しようかなと思っていた。もしかしたらフジミドリシジミがいるかもしれないし。

 旅館に戻ったのは7時1分。妻に「いなかった〜・・・」と報告すると、「えっ!いなかったの??」と言われた。

 「いなかったよ・・・。でもほら、また来年もあるしさ」と言った。

 朝食を食べてチェックアウト。二人で2万3千円。海の幸が好きな人、部屋や温泉が古くても気にならない人にはいいと思う。「古いけど清潔感はあったよ」と妻は言っていた。自分は泊まれれば何でもよかったが、海の幸がそんなに好きではないので、素泊まりで良かったかな?妻は喜んでいたけど。

 荷物を車に積んで出発。妻は「もう一度ポイントに行く?」と言ってくれたが、自分は妻が、ガロウの滝の吊り橋に行こうと言っているんだと勘違いして聞いていた。ガロウの滝の吊り橋付近はあまり蝶がいそうな気がしなかったので、

 「いや、この旅館の近辺でも蝶がいそうな場所あるからちょっと探してから帰ろう」と言った。そう言ってすぐに車を走らす目の前で緑のシジミが2頭、縄張り争いをしながら飛んでいる姿を発見!

 
 「いた〜!」と言って慌てて車を止め、その蝶を追いかけどこかに止まるのを待った。そして止まった所を一眼レフのカメラで狙う。

 「あれ?メスアカのオスだ・・・。」


ミドリシジミ類♂

 そうだよなー、いくら島牧にフジミドリシジミが生息していると言っても、緑のシジミが全部フジミドリシジミなわけでもないし。
 でも、さっきミズイロオナガシジミを見つけて、ちょっとフジミドリシジミに近づいたと思ったように、メスアカミドリシジミを見つけて、更にフジミドリシジミに近づいてきたと思った。

 付近にはかなりたくさんのミドリシジミ類のオスが飛び回っている。付近を歩きながらミドリシジミ類の観察をした。これらの中にフジミドリシジミが混じってるかもしれないと思って。

ミドリシジミ類


ミドリシジミ類

 昨年の7月5日に函館市の東山で多数のミドリシジミ類を観察したが、それと同等かそれ以上の数のミドリシジミ類が飛んでいた。
 今年は蝶が少ないと思い込んでいたが、それは思い込みだったのかも?と思う位たくさんのミドリシジミ類を見ることが出来たが、残念ながらその中にフジミドリシジミを見つけることは出来なかった。


 旅館付近でたくさんのミドリシジミ類を観察しているうちに気温も上がり、太陽も高くなってきた。蝶たちの活性も高くなり、ビュンビュン飛び回って縄張り争いをしているので、写真にも撮りにくくなってきた。

 もうそろそろ諦めて帰ろうかと思った時、妻がまた「ポイントに行かないの?」と言い出した。さっきも書いたが、自分は妻が言っているのはガロウの滝の吊り橋の事だと勘違いしていたので、「何でガロウの滝にそんなに行きたいの?」と聞いた。そしたら「違う違う、そこじゃなくて、昨日も行ったあの場所(教えてもらったフジミドリのポイント)の事!」と言った。

 ここでようやく私は勘違いに気付いた。

 なんだ、早朝に行ったあの場所かい。あそこはフジミドリシジミがいなかったからもういいよ。と思ったのだが、最後の最後にもう一度見に行ってから帰ってもいいかと思ったので、立ち寄ることにした。

 ポイントに到着。まだ陽は差していない。山の影になっているのだ。

 車をポイント付近に止めて降りた瞬間に妻が「いたよ〜!」と私に言った。

 「何が??」というと、「緑のシジミ」と妻が言った。

 でもさっき来た時は見つけられなかったよ、と思いながらも妻の方に行くと、確かに緑色のシジミがいて、どっかに飛んで行ってしまった。

 種類は確認できなかった。が、確かにミドリシジミ類のオスには違いない。ここはポイントとして教えてもらったまさにその場所。もしかしてフジミドリシジミだったかも。

 だとすれば、千載一遇のチャンスを逃したかもしれない。でもフジミドリシジミだったかどうかもわからない。

 もう少し探してみようと思い、草やフキの葉を見ると、一瞬「おっ!」と思った。

 でも残念。ヒメウラナミジャノメだった。

ヒメウラナミジャノメ

 更に下草を見て歩くと、シジミチョウらしき姿発見!もしかしてフジミドリシジミ?と思いファインダーを覗くと、かなり擦れたミドリシジミ類だという事がわかった。葉っぱに止まってじっとしているのでよーく観察すると、擦れているけどどうやら遂にフジミドリシジミを見つけたようだ!

 とりあえず黙って何枚も撮影。羽の裏面の太い白い線はフジミドリシジミの特徴であり、まず間違いなくフジミドリシジミだろう。

ようやく最後の最後でフジミドリシジミ(♂)

 ただ、自分はこれまで一度もフジミドリシジミを見たことが無いので、これだけ擦れたものだとちょっと自信がない。

 でも妻に「フジミドリシジミいたよ〜!」と教えた。

 HPの蝶の写真館にようやくフジミドリシジミのページを作れるなと思った。だけど、ちょっと擦れすぎているので、この写真だけでフジミドリシジミのページを作ると思うとちょっと弱いというか。やっぱりフジミドリシジミと言えば他のミドリシジミに比べて青みの強いオスの表面が最大の特徴だろう。

 もっといるかもと思い、更に探すと、今度はとても綺麗なフジミドリシジミを発見した。

綺麗なフジミドリシジミ(♀)

 これならいい写真が撮れると思いながらも、こんなチャンスは滅多にないから、ちゃんと目にピントを合わせて撮影しないと!と思い、何度もシャッターを切った。このフジミドリシジミはメスだった。とっても綺麗だったので採集して標本にしようかと思ったのだが、昨日前田さんが「メスが採れたら採卵させたいので持って来てほしい」という言葉を思い出した。
 なので、ある程度撮影してから網で採集し、本多さんからもらったフィルムケースに入れた。

 本多さんからはフィルムケースを3つもらっていた。ということは、3頭のメスを持ってこいということだなと思い、更に探す事にした。

 よくよく探すと結構な数のフジミドリシジミがいた。何でさっき来た時には1頭も見られなかったのに、今はそれなりに多くのフジミドリシジミが見られるのだろう?ちょっと不思議だった。

 観察すると、オスはかなり擦れているものばかり。メスは綺麗な個体が多かった。オスの時期は外してしまっているのだろう。
 綺麗なオスの羽を開いたところや、メスの羽を開いたところも撮影できなかった。

ボロボロのオス

 綺麗に撮れたのはメスの裏側だけだったけど、フジミドリシジミは翅の裏側の模様も特徴的だし、それが撮影できただけでも大満足。来年はもう少し早い時期に来て綺麗なオスの羽を開いた写真を撮れればいいなと。

 フジミドリシジミを探しながらよくわからない甲虫などの写真撮影もした。

よくわからない甲虫。カミキリ?







フジミドリシジミ♀

 フジミドリシジミはメスを5頭採集した。もっともっと採集できたかもしれないけど、フィルムケースを3つもらって5頭のメスを採集して持っていけば前田さんもきっと喜んでくれるだろう。

 卵を産んだら前田さんから少し分けてもらおうと思ったので、自分用には採集してこなかった。

 来年は是非綺麗なオスの写真を撮影したい。

 道南虫の会の掲示板でフジミドリシジミの話題が出て、未来大学でたまたま井本さんと一緒になって詳しく話を伺い、もうだめだなと帰ろうと思った時に妻が「もう一度戻ったら?」と言ってくれた。こういう幸運が重なって最後の最後にフジミドリシジミに出会うことが出来た。いろんな人の助言があり、ようやく出会うことが出来たので、たまたまどっかの山に行ったらフジミドリシジミがいたという感覚ではない。
 そういういろんな人の助言や協力にとてもありがたい気持ちになった今回の島牧遠征であった。