今年初の汐首と体験入部生
2016.5.14

 今週の土日は天候が良さそうだったので、今年初の汐首調査に行くことにした。ちょうど本州からアサギマダラが飛んでくる季節にもなってきたので函館山の調査も考えにあったが、道南虫の会の安井さんが行ってくれるというので、我々は汐首の調査という事で。

 これまで汐首でアサギマダラが発見されたことは無いが、道南地域において汐首は本州との最短地点(大間と17.5km)ということもあり、個人的には飛んできてもおかしくないのではと思っている。

 今日の活動においては、新入生の中で一人、体験入部で参加するという生徒がいることが珍しい。私が担任をしているクラスのYさんだ。部長のYさんとイニシャルがかぶるので、1年生のYさんという事にする。

 本当は参加部員は1年生3名、2年生2名、3年生1名という予定だったが、1年生のT君が寝坊で不参加となった。

 予報通りとても天気がよく活動日和だったが、汐首の山頂まではけっこう汗をかいて疲れる。自分はアサギマダラ以外にミヤマセセリの採集をさせたり写真を撮ったりしたかった。

汐首の登山道入り口


みんなで網を持って歩く

 汐首の山頂に行くまでには細い登山道を歩く。ほとんど舗装されているしそれほど急な坂は無いが、これだけの人数が固まって歩くと効率的ではない。何グループかに分けて歩いたほうが蝶の採集などにはいいのではないかと思ったが、今年初という事もあり、みんなで一緒に歩いた。

 ミヤマセセリは見つけることが出来たが、その他の蝶の数はそれほど多くなかった。そのため、多分過去最速で山頂までたどり着いた。例年なら自分は汗をかいて部員に「先生、風呂上りみたいになってますよ」と笑われるのだが、今回はそこまで汗だくにはならなかった。

 山頂は少し風が吹いていたが、大間の方などかなりはっきり見えて景色を楽しむことが出した。ここではいつも野生の馬を見ることが出来るのだが、何故か一頭も見られなかった。登山道を歩いている最中にたくさんある馬糞もあまり見られず、去年までたくさんいた野生の馬がどうなってしまっているのか心配だった。

山頂から見た大間の方

 山頂では何頭かのキアゲハが吹き上げられてきており採集してみたが、みんなボロ。もう発生のピークは過ぎているのだろうか?

 対馬先生は相変わらず変な格好で誰かと電話をしていた。

変な格好で電話をする対馬先生と体験入部の1年生Yさん

 1年生のYさんは、中学生の頃はバスケットボールをしていたらしく、本当はバスケ部に入りたかったのかもしれないが、残念ながら学校にバスケ部が無く、マネージャーと言う選択肢も持っていたらしい。だけど「自分が活躍できる部活もいいんじゃない?」と担任としてアドバイスした。「例えば吹奏楽とか美術とか放送とか図書とか」などと言ったのだが、その中に「生物部」とは言っていなかった。だけど生物部に興味を持ってもらったみたい。2年生の部長Yさんに「1年生で女子の部員が出来たら嬉しい?」と聞くと、「そりゃぁ嬉しいですよ」と言っていたけど、もし蝶や昆虫に興味のない生徒が部員になったとしても、それはそれで困る。なので今回は体験入部という事で参加してもらった。

 蝶は触れるから問題ないらしい。だけどクモは苦手と言っていたし、こうやって山に来たり林道を歩いたりしたことは無いと言っていたので、ちょっと心配だったのも事実。函館山には登ったことがあると言っていたような気がしたが、函館市民ならだいたい1度は登ったことがあるから、それで自然が好きとは断定できない。

 なので、今回体験入部で汐首に来て、面白くなかったら入らなければいいし、面白かったら入部すればいいなと思っていた。
 今の所性格は大人しそうと言う印象だが、一人で知らないグループの活動に参加すれば当然緊張もしているだろうし、なによりも現在の部長Yさんだって、入部してきた去年の今頃は借りてきた猫のように大人しかった。今の姿からは想像もできない位・・・。

網を持って山頂をウロウロする体験入部の1年生Yさん

 アサギマダラを見つける事も出来なかったし、1年生部員にとっても初めての汐首で野生の馬も見せることが出来なかったが、爽やかな天気の元、みんなでここに来れたことは嬉しかった。記念写真を撮って下山することにした。

最近毎回恒例になっている記念写真

 自分が高校生で部員だった時は男子ばかり4人の部員だった。もし体験入部の1年生Yさんが入部すると言えば、全部合わせて部員は11名。そして女子は3名となる。ただ「やっぱり入りません」と言われると、幻の女子3人部員ということになるなと思い、記念に女子だけで記念撮影もした。

女子3人で記念撮影

 自分が赴任した年、Mさんが1年生で入部してきた。自分はこれだけでもかなり凄いと思っていた。まさか昆虫の調査をする部活に女子が入って来るとは思わなかったからだ。しかし次の年には現部長のYさんが入部。次の年(今年)には部長にまでなった。昨年1年間を考えても多分ダントツで活動にも参加しているし、蝶の採集もかなり積極的に行っている。展翅も上手になった。それは個人的には奇跡的だと思っていた。しかしこのMさんと部長のYさんは自分が苦手なワラジとかも全然平気でいたずらで自分に投げつけてくるようになった。しょうがないのでMさんとは協定を結んだ。Mさんはカエルの卵が苦手のようなので「俺はMさんにカエルの卵でいたずらをしないので、Mさんも俺にワラジでいたずらをしない」という協定。
 ところが現部長のYさんは苦手なものが無い。だから協定を結べず、いたずらをしてくる。ワラジを持って走ってこられると本当に恐怖だ。
 今回体験入部した1年生のYさんは今日楽しんでいるかな?と思いつつ、下山することになったのだが、先に対馬先生と男子部員が行き、しばらくしてから女子3人を下山させることにした。その方が色々観察できる機会が増える。自分は女子部員の更に後ろを一人で下山することにした。自分はカメラを持っているので、蝶の写真を撮りたいというのもあった。網を持った人と一緒に歩いてもなかなか写真が撮れないから。

先を行く対馬先生と男子部員、後から行く女子たち

 どんな話をしながら歩いているのかな?と思いながら女子部員達を見て撮影していた。どうせ後から「盗撮だ」とか「ストーカーだ」とか言われるんだろうなと思ったけど、そんなの関係ない。観察しているといきなりYさんが網を振りだしたりして「あ、蝶がいたんだな」と思ったりしながら観察しているとなかなか面白い。

女子たち


青森をバックに飛ぶカラス


函館山。立待ち岬の左後方に見えるポコッとした山は丸山

 麓付近まで降りてくると、知らない花が咲いていた。

知らない花

 そして今年もドクガの幼虫を発見した。こいつらはやっかいだ。画面ではほとんど見えない小さな毛(毒針毛)に毒性があり、これが肌に触れると赤く湿疹みたいになる。今年も気を付けないと。更に蝶と違い、ほとんど何でも食べるらしい。どんな葉っぱでも食べるならどこにでも生息している可能性があり、気を抜けない。

ドクガの幼虫

 まだ時間が早かったので鉄山に移動することにした。途中、どこだか忘れたが八重桜が綺麗に咲いている名所があったらしく、一瞬だけ立ち寄った。

八重桜のトンネル


この神社の所で八重桜が咲いている

 鉄山の入り口で対馬先生はウドを発見して採っていた。

ウドを採った対馬先生


カッターでウドのいらない所を切り落としているところ

 対馬先生は私と女子部員達に「先に行ってて、後から行くから」と言ったので、私と女子部員は先に行った。
 歩きながら蝶を採集したりしていると、遅れて対馬先生と男子部員達がやってきた。だけど対馬先生は「俺たちはちょっと調査をしてから先に帰る」と言い残し、行ってしまった。

 鉄山ではこの2年か3年、同じところでアサギマダラの卵を発見している。今年もどうかなと思ったが、食草のイケマはまだ芽吹いたばかりで、これじゃぁ仮に今アサギマダラが飛んできても産卵できないだろうなと思った。

イケマ

 鉄山の林道を私と女子部員達でフラフラ歩きながら蝶の観察をした。オオモンシロチョウ、アカマダラなどを体験入部のUさんが採集したので、「これは北海道にしかいない蝶なんだよ」とか「オオモンシロチョウは20年くらい前に外国から道南に入り込み数が増えた蝶で外来種なんだよ」とか教えた。「ふぅ〜ん・・・」的な反応だった。

 帰りに体験入部のYさんと二人になる時間帯があったので「今日一日体験してみてどうだった?」と聞くと「楽しかったです」と答えが返ってきた。だけど社交辞令かもしれない。「で、入部したいと思った?」と聞くと、「入部します」と答えた。これを聞いて「本当に楽しいと思ったんだな」と感じた。「じゃ、これから一緒に頑張ろうね」という事で、彼女は生物部の一員になることになった。

 これまでバスケットボールで頑張ってきたのに、いきなり畑違いの生物部。「家の人に生物部の話をしたら何て言ってた?」と聞いたら「笑ってた」と。そりゃ笑うよなとも思ったけど、これからたくさん活動に参加して、新しいジャンルに興味を持ってもらえればいいんだけど。そして、現在の女子部員だけではなく、男子部員にとっても新しい仲間が増えることは嬉しい事だと思うので、先輩たちは優しく親切に色々な事を教え、今年入った男子部員も同じ部活の仲間として一緒に頑張って行ってもらいたい。

 今日は自分は1枚も蝶の写真が撮れなかった・・・。