千葉のSさんとカバイロシジミ
2017.7.15

 いよいよ今日は千葉からSさんがカバイロシジミを求めて函館に来る日だ。Sさんは自分がまだ帯広にいる時に、チャマダラセセリやジョウザンシジミなどの撮影案内をして以来のお付き合いで、部員達のためにと標本箱を40箱も寄贈してくれた方である。
 実際は昨日の夕方に函館に入っているとの事だったが、活動は今日と明日。
 せっかく函館に自分を頼ってきてくれるのに坊主では帰せないので、この1か月ほど、カバイロシジミがいそうな場所を色々探した結果、汐首に行けばまず間違いなくカバイロシジミが見れるだろうという結論に至った。

 それでも念のため、3年生の部長と副部長をカバイロ探し隊として参加してもらうことにした。

 時間も早めの方が活動時間がたくさん確保できるだろうと思い、7時半にSさんを迎えに行った。部員達とは初対面なのでお互いに挨拶をして汐首に向かった。

 函館を出る時には天気も良かったのだが、汐首に向かっているうちに曇ってきた。晴れている方がいいかなと思っていたけど、霧とか霧雨とか雨じゃなければ何とかなるとは思っていた。気温は高めだからきっとカバイロは飛ぶだろう。

 ポイントに到着して、チームを二つに分けた。部員チームと私&Sさんのチーム。

 私とSさんは坂道を上に行き、部員達は下に行く。部員達がカバイロシジミを見つけたら電話をしてもらう事になっていた。

 私とSさんは坂を上りながらカバイロシジミを探すがなかなか見つからない。正直すぐに見つかると思っていたが、どうしたことだろう?部員からも連絡が来ないので電話してみたら「まだ見つけてません」という返事。

 引き返しながらカバイロシジミを探そうとしたときに副部長のN君から電話「先生、カバイロいました」

 「おっ、よし!そのカバイロから目を離すな!」と言い、Sさんと部員達の元に向かった。向かっている最中に1頭カバイロらしき蝶を見つけて追いかけようか迷ったが、どっかに飛んで行ってしまったので、とにかく部員達の元に向かった。

 部員達を見つけると、まだしっかりカバイロシジミを観察しているようだ。とにかくSさんに撮影してもらわなければならないので、「行ってください」と言って、Sさんには部員達の所へ行ってもらい、自分は少し距離を置いて見ていた。

 N君がSさんにカバイロシジミがいる場所を指差して教えた。Sさんが撮影を始めた。

 部員の2人よくやった!これでSさんの目標は達成だ。

カバイロシジミ撮影を始めたSさんと見事カバイロシジミを見つけた部員達

 少しして自分も向かってみた。すると、カバイロシジミがかなりの数見られた。10頭近くいたんじゃないだろうか?最初、部員達は1頭だけ見つけたんだと思っていたんだけど、こんなにたくさんいるとは・・・。

 部員達に聞くと「最初は1頭しかいなかったんだけど、あれよあれよと言う間に増えてきて、今かなりの数になってるんです」と言う。
 へぇ〜そうなんだと思いつつ、自分も少しだけ撮影した。

カバイロシジミ

 が、カバイロシジミの写真はこれまで何度も撮影しているのであまり気合が入らない。数もかなりいるし、食草であるクサフジも道沿いにずっと生えている。

 Sさんはこの場所で思う存分撮影してもらうとして、自分たちは道路沿いにクサフジを見つけながら他にもカバイロシジミがいないか探してみた。すると、道沿いにクサフジが生えている所は大体カバイロシジミを見つけることが出来た。

 Sさんの邪魔にもならないだろうし、数も多いし、せっかくだらか少し採集して行けばと部員達に言って、部員達は数頭ずつ採集していた。

 10分か15分か、Sさんも満足したかなと思ったら、だんだんカバイロシジミがいなくなって、さっきあれだけいたのに今はあまりいなくなったと言う。
 部員達がカバイロシジミを見つけたタイミングや私たちが部員の所に行ったタイミングが良くて、偶然的にたくさんのカバイロシジミを目撃できたのかもしれないなと思った。

 自分もSさんもミッション成功という事で、心に余裕を持って、他の蝶の観察などを出来るような心境になった。道の両脇にいたいろんな昆虫を観察した。

コキマダラセセリ


ドクガみたいの

 蛾が2頭くっついていた。同じ種類のオスとメスなのか、それとも違う種類なのかよくわからない。

くっついている蛾

 Nくんが、突っつくと凄い身体をクネクネさせて嫌がる毛虫を見つけたというので見に行った。突っついてみると確かに体を大きく揺らして抵抗するんだけど、何度もやっているうちに飽きてきたのか抵抗しなくなった。

抵抗する毛虫

ゾウムシが交尾していた。 通常上が♂で下が♀だけど、メスの方がかなり大きく感じた。

交尾するゾウムシ

 キアゲハの幼虫も見ることが出来た。ツンツン突いて臭覚を出させて指に付けて匂いを嗅いでみたが、相変わらずむせるような嫌な臭いだった。だけどこれが癖になる。

キアゲハ終齢蝶中


ヒメウラナミジャノメ

 今年初めてキマダラセセリを見つけた。写真撮影後部員に採集させた。

キマダラセセリ

 またゴイシシジミを見つけた。今年ゴイシシジミを見つけるのは2回目。1回目は展翅出来ない位小さな奴だったけど、こいつは通常の大きさだった。

ゴイシシジミ

 カバイロシジミを見つけてくれた部員二人。今日のミッションはもう成功なので、それぞれ好きに採集させてやろうと思った。

部員達

 Sさんもある程度満足いくだけ写真撮影が出来たらしい。これは部員による貢献が大きいので、今日はふたりとも本当によくやったし、色々リサーチした結果、ここの場所を選んでよかったと思った。

 カバイロシジミの撮影が成功したのは良かったが、まだまだ時間はある。Sさんにどうしたいか聞いてみたら、北海道の色々な蝶と遊びたいというような事を言われた。

 本州の方が北海道に蝶の採集や撮影に来る場合、大抵道南は選ばない。なぜなら、道南の蝶は本州にもいる種類が多く、道東や道北などの方が北海道にしかいない蝶が多いからだ。

 函館に生息している北海道特産種で、今撮影できそうな種類を考えたらエゾヒメシロチョウかアカマダラ位しか思いつかなかった。

 道東ならどうだろうと考えてみると、エゾヒメシロチョウやアカマダラはもちろん、カラフトヒョウモンやホソバヒョウモン、北海道特産種ではないけどオオイチモンジなど人気のある蝶、ジョウザンシジミ、カラフトタカネキマダラセセリは時期的に遅い?かもしれないけど、カラフトセセリは生息範囲を広めているようだ。

 そういうわけで、たいして珍しい蝶も考えつかなかったが、道南の雰囲気を味わってもらうため、たくさんの種類のチョウで遊んでもらおうと考えた。

 まずはエゾヒメシロチョウが見られる場所に向かった。自分たちとしてはヒメシロチョウのほうが珍しいから、目的は違うけど、楽しめるかなと思って。ここもカバイロシジミがいそうな場所で、汐首がダメだったら来ようかなと思っていた候補のひとつだ。

 場所に到着して草原のような畑のような場所を歩いてみた。クジャクチョウがまずまずいて、白い蝶もチラチラ飛んでいる。まぁ大体ヒメシロチョウかエゾヒメシロチョウなんだけど、どっちなんだかよくわからないのが悩みの種。他の場所ならエゾヒメシロチョウしかいないのだが、ここは混生している。自分も撮影してみたけど、翅の形がヒメシロチョウっぽいなとは思うけど、実際には自信がない。

ヒメシロチョウ?

 草原の方から森の方に歩いて行くと、ミドリシジミ類やアカマダラが見られた。自分はアカマダラはどうでもいいけど、ミドリシジミ類は撮影したいし部長のYさんは採集したいと思う。みんなで撮影したり採集したりしたけど、緑色がキラキラ輝くいい角度での撮影はできなかった。

ミドリシジミ類

 ミドリシジミ類は大体メスアカミドリシジミかジョウザンミドリシジミだった。

 自分は今年、是非綺麗なオオミスジの写真を撮りたいと思っていたので、ここ最近はよく探していた。今日も探していた。部員には「ミスジチョウみたいのがいたらオオミスジかもしれないから採集して」と頼んでいた。

 そしたらそれらしき蝶が飛んでいたので、N君に採集してもらった。オオミスジだった。

 でも少しボロだった。

 この辺にもオオミスジいるんだね〜って言っていたら、N君が「先生、あそこにたくさんいるように見えるんだけど」と言う。
 「どら、どこよ?」ってN君の指差す方を見るがなかなかわからない。

 でも、よーく見ると何やら黒っぽいのが動いている。カメラで覗いてみたら、なんとオオミスジの塊だった。

オオミスジの塊

 なんでこんな所にオオミスジの塊が!?多分、4〜5頭位のオオミスジがいる。オオミスジ自体多い蝶ではないという印象を持っているので尚更びっくりした。何してるんだろう?メスに群がっているんだろうか?

 N君には結局2頭採集してもらったが、どちらも綺麗とは言えない感じだった。少し時期が遅かったのかもしれない。来年はもう少し早い時期に来てみようと思う。

蝶を探す部員達

 その後アカマダラも撮影することが出来た。ちょうどサカハチと似たような角度で撮影した写真があったので、比較のために並べてみる。

左がサカハチで、右がアカマダラ

 この2種の違い、こうやって比較するとわかるけど、自分でも時々わからなくなることがあり、あれ、どっちだ?ってなる。部長のYさんは林道でアカマダラを発見するとすぐにわかる。
 エゾスジグロシロチョウとスジグロシロチョウ、サカハチとアカマダラ、ヤマキマダラヒカゲとキマダラヒカゲ、ヒメシロチョウとエゾヒメシロチョウ、ミドリシジミ類、スジグロチャバネセセリとヘリグロチャバネセセリ。
 見分けが難しい種類の蝶はけっこうある。自分もよくわからないものがある。
 部員達にもたくさん観察して、こういった見分けにくい蝶を見分ける力をつけてほしい。

 その後、鉄山の林道に移動した。何がいると言われれば特にないんだけど、いろんな蝶を見ることが出来る可能性が高い。高校生の頃からよくこの林道には来ているが、困った時には鉄山!的な感じである。

 クジャクチョウやシータテハなどが見られた。

シータテハ


種類がわからない幼虫(イラクサ)

 けっこう大きいコクワガタもいた。すぐに逃がした。

コクワガタ

 同じ場所にミヤマクワガタのメスがいた。ということは、この近くの木にクワガタが集まっている場所があるのかなと思ったけど、見つけられなかった。

ミヤマクワガタの♀


蝶を探す部員達

 部長のYさんが「トンボ採った」と見せられた。無言で「写真撮っとけ」的な圧力を感じたので、撮った。

トンボ

 鉄山の林道も十分歩き、いろんな蝶を観察した。Sさんは車を降りた瞬間からスタスタ力強く歩いて先に進んでいくので、自分たち3人は採集したり撮影したりしながら歩き、Sさんと離れてしまい、「あれ?Sさんどこ行った?」的な感じもあったんだけど、どうせ林道は1本だから、そのうち合流できるなと思い、逆に自分たちがワーワー言いながら一緒に歩くより、Sさん一人で好きなようにやってもらったほうがいいなと感じた。

 最後、いつもの魚道で記念撮影をした。
 部長のYさんに、「先生が持ってるカメラとSさんが持っているカメラのレベルが違い過ぎる」とディスられた。ふんっ!

記念撮影

 Sさんから「カバイロシジミの写真を撮りたい」と最初に相談を受けた時には、まずカバイロシジミはそんなに多くないけど北海道ならどこにでもいるし、函館近郊よりも十勝とかのほうがいいんじゃないかと思ったが、色々歩いて調査すると、函館近郊にもかなりの数生息していることがわかり勉強になった。

 そして今日、部員達が見つけてくれたカバイロシジミは、自分の中では一番多かった。高校生から蝶をやり始めて、こんなにカバイロシジミをたくさん見たのは初めて。そういう所にSさんを案内できた事は大成功だったし、部員達もとても良く頑張ってくれた。
 晴れの予報だったが、ほどよく曇ってくれたので、体力の消耗もそれほどでもなかったし、とても良い成果を得られた一日になった。