初めての蝶、ウラジャノメ
2013.7.13

 金曜日の夜、fieldさんから電話が来た。明日(土曜日)の予定はどうなっているか?というものだった。
 雨が降ったら仕事しようかと思っていたが、晴れる予報だったのでどこか山に行こうと思っていた。そのことを言うと、「それなら日高方面に行かないか」と誘われた。

 私がこれまでまだ一度も生きている姿を見たことが無い、ウラジャノメという蝶を見に行こうという事だった。

 十勝に来て10年以上になるが、生息しているはずのウラジャノメをまだ一度も見たことが無い。いや、視界に入った事はきっとあるはず。だけどそれをウラジャノメだとは思わず、他の一般的な蝶だと思い込んでいたんだと思う。クロヒカゲとか。

 ここ数年、ウラジャノメの写真を撮りたいと思っていた。生息地は色々あるようだが、一緒にツマジロウラジャノメも見れる可能性があるし、釣りもしたいので日高が最適だということだった。

 どこかには行こうと思っていたが、はっきりここに行こうと決めていたわけではないし、ウラジャノメが撮影できる可能性が高いならfieldさんの提案に賛成だ。

 「釣りするなら、俺に貸してくれる竿ある?」と尋ねると「ある」とのこと。
 それなら明日は蝶を探したり釣りをしたり、楽しい一日になりそうだと思った。


 朝8時にfieldさん宅に迎えに行き出発。芽室から清水まで高速を使い、久しぶりに日勝峠を通って日高方面に向かった。

 目的である林道に入り、しばらく進むと、緑色に輝く小さな蝶が2頭、クルクル回りながら飛んでいた。すぐにミドリシジミ類のオスであることがわかった。車を止め、何ミドリシジミか確かめようとしたがクルクル飛んでいるのでわからない。
 ミドリシジミ類を見るのは今年初めてだったので、きっと綺麗な個体であると思い、撮影も出来そうにないならということで採集した。
 2頭を一振りで採集し確認してみると、それはメスアカミドリシジミのオスであった。やはりかなり綺麗で、羽化からそう経っていないようだった。

 この林道ではオオイチモンジも期待できるので、特にオオイチモンジが出てきそうな橋の周辺では車を少し遅めに進めながらあたりを観察していた。すると、また2頭のシジミチョウが飛んでいるのが見えた。先ほどと同じようにクルクル周りながら飛んでいた。
 ただ、緑色には見えなかったので、車を降りて確認してみた。
 さっきとは飛び方は同じだけどやっぱり緑色には見えない。しかもよく観察してみると、青くキラキラ光っている。種類が全く分からない。
 青く光るシジミチョウって???やっぱりわからない。
 そこで、また採集する事にした。今度も一振りで2頭採集できた。で、何の蝶か確認してみると、なんとまたメスアカミドリシジミのオスだった。何で??

 どうやら、光の当たり方か見る角度の関係で緑色に見えなかったようだ。
 構造色という特殊な発色をする蝶なので、見る条件によって色がかなり違って見えるのだ。

 もう素人でもないのに、一瞬「フジミドリ??」とか思ってしまった自分が恥ずかしかった。

 林道を、鎖がかかっている地点まで進んで、そこからは徒歩で林道を歩きながら点在するツマジロウラジャノメを探しつつウラジャノメも探すという感じで歩いた。

 ある地点まで来たときfieldさんが、「ここで過去に何度かウラジャノメを見たことがある」と言った。日陰の薄暗い環境だ。

 それから1分もしないうちに、何やらクロヒカゲのような蝶が飛んだがどうもちょっと違うような気がした。なのでfieldんさんに

 「これウラジャノメじゃない?」と聞きながら飛んでいるその蝶を目で追いかけた。すると、その蝶が止まった。まぎれも無くウラジャノメだった。

 生まれて初めて生きているウラジャノメを見た。

 もしfieldさんが「ここで数年前に見た」と言わなければ見過ごしていたかもしれない。タイミングよくfieldさんが発言し、タイミングよく蝶が現れてくれた。そして運よく近くに止まってくれた。運とタイミングがばっちり合わさってウラジャノメを発見することが出来た。

 数枚写真を撮らせてくれたが、その後ウラジャノメはどこかに飛んでいってしまった。
 でも今日の狙いのひとつであったウラジャノメを見事発見、撮影することが出来、とても嬉しかった。
 

初めて撮影したウラジャノメ

 初めてウラジャノメを観察することが出来、印象としては(クロヒカゲ+シロオビヒメヒカゲ)÷2=ウラジャノメという感じだった。

 更にしばらく歩きツマジロウラジャノメを探すが見つからない。少し待ってみたがツマジロウラジャノメはとうとう姿を現してくれなかった。

 林道を車まで戻る事にした。戻る間にツマジロウラジャノメやウラジャノメが現れてくれるかもと期待しながら。

 この林道には、林道すぐ脇のちょっとした崖から水が流れて滝のようになっている場所がある。流れた水は林道を横断して反対側の川に流れている。これまでけっこうたくさんの林道を歩いたが、こういうのはあまり無いので写真でも撮ろうと思った。

滝とfieldさん

 車まで戻ってくると、なんと車の所にウラジャノメが飛んでいた。しかも、なかなか逃げずに私たちの周りを飛んでは近くに止まる。これの繰り返し。葉っぱに止まったり、私の車に止まったり。思う存分撮影できるくらいモデルになってくれた。しかも、羽を開いた所も撮る事が出来て、大満足。これでHPで紹介する北海道の蝶をまたひとつ増やせるのでかなり嬉しかった。

車の近くの葉っぱで羽を開いてくれたウラジャノメ

 車に乗り込み、来た道を戻った。途中、魚が釣れそうな場所があり、そこで車を止めて釣りをすることにした。

 学生時代、随分川釣りはしたが、ほとんど餌釣りで、今日やるルアー釣りはそれほど経験が無い。fieldさんが竿とルアーを準備して渡してくれた。

 川のところまで行き、早速釣りをする事にした。fieldさんより先に釣ってやろうと思い、急いでルアーを投げた。自分の思ったところとは違う所に飛んでいったが、まずまずだ。それで、リールを巻こうと思ったんだけど、いきなり川底にルアーが引っかかってしまった。

 「やばい、一投目でひっかかった!」と、fieldさんに助けを求める。しかし、かなりがっちり引っかかっているようで、結局糸が切れてしまった。

 「ごめーん!いきなりルアー無くしちゃったよ、新しいのちょうだい!」

 ところが、他のルアーは車の中にあるというので、ルアーが入っているケースを取りに車まで戻って、そこからまた川のほうに行くと、既にfieldさん、魚を釣り上げていた。

 あ〜、先に釣ってやろうと思ったんだけどダメだったか・・・。

 その後、なんとか自分も3匹位魚を釣ることができた。そんなに大きな魚ではなかったけど、魚の密度が濃いのか、ルアーを追いかけてくる魚を何度も見ることが出来て楽しかった。
 だんだん魚が釣れなくなって来た。ルアーで釣れる魚のサイズはいなくなってきたのかもしれないから、場所を移動しようということで、車に戻り移動した。

 林道を更に戻り、別の林道に移動しようとしたのだが、その途中、橋の所でオオイチモンジ発見!!

 急いで車を降りるがオオイチモンジは飛び去ってしまった。

 ちょうどここの橋の下が釣れそうな川だったので少し釣りをした。橋の下に降りるとおびただしいシカのうん子があった。ちょうど橋の下がうん子でびっしり。積もっている。何でこんなにシカのうん子が積もっているのか謎だった。

 次に、違う林道へ向かった。数年前、fieldさんがこの時期に多くのアゲハチョウ類を見たというのだ。ムシトリナデシコがたくさん咲いている場所があって、そこにミヤマカラスアゲハやオナガアゲハが多数吸蜜に来ていたらしい。

 しかし、残念ながらそのような光景には出会えなかった。代わりにいたのは多数のエゾシロチョウ。一心不乱に吸蜜していたり、メスを求めてオスが求愛していたり、メスに拒否されていたり・・・。

 ミヤマカラスアゲハが数頭見られたくらいだったがエゾシロチョウの色々な姿が見られて楽しかった。

求愛するオス(右)と拒否するメス(左)。花はムシトリナデシコ

 この後、また近くを流れる川で釣りをした。上流側には砂防ダムがあったがfieldさんは下流側に向かった。

 自分は砂防ダムの落ち込みに必ず大物がいると思い上流側に向かった。
 その間、2匹か3匹位釣ることができた。

 砂防ダムの落ち込みに着いたのだが、どうも落ち込みが深くなっている様子が無い。それでもルアーを投げてみた。そしたら見事にルアーが引っかかってしまった。

 fieldさんはずっと下流側にいるので、ルアーを無くしてしまえばまたもらいに行かなければならず、かなり面倒だったので困った。なんとしてもルアーを無くしてはいけない。

 そこで、靴を脱ぎ、ズボンを脱ぎ、川の中に入った。糸をたどりルアーが引っかかっているところを手で外す作戦だ。

 ところがルアーはちょうど水が落ち込んでいて滝のようになっている所で引っかかっていた。
 手を水の中に入れてルアーを探したが、上から落ちてくる水が頭の上からもろにかかり、ビショビショになってしまった。しかも引っかかっているのがなかなか取れず、更にビショビショ。上半身も裸になって水に入ればよかった。

 素足で川の中に入り、石ころの上を歩くのはかなり痛かったが、足ツボマッサージになって健康になれるかもと思った。

 なんとかルアーを外したが体中びしょ濡れだったので、しょうがないからパンツとランニングシャツだけの姿で釣りをした。2,3匹釣ることができた。

 


パンツとランニングだけで釣りをする私
(fieldさん撮影)
後ろに見えるのが砂防ダムの落ち込み

予感があったのかどうかわからないが、着替えのTシャツを持ってきていたので、釣りの後車に戻り着替えて帰ることが出来た。

 今日はあまりたくさん写真を撮る事が出来なかったし、オオイチモンジも一瞬見ただけで撮影できなかった。fieldさんはツマジロウラジャノメの撮影が出来ず残念がっていたが、自分は念願であったウラジャノメの写真撮影に成功し、久しぶりに釣りをして、とても充実した一日になった。

 帯広に戻る途中、明日も一緒にどこかに行こうと話し合った。