蝶・乱舞!
2013.7.14

 今日もfieldさんと行動を共にする事になっていた。ただ、どこに行こうかは決めていなかった。朝、fieldさん宅に迎えに行き、どこに行こうか相談。

 自分としては上士幌方面もしくは帯広の南側あたりがいいかなと思っていた。
 今年の蝶に関しては、とにかく山に行っても数が少ないという印象だったので、例えばオオイチモンジ目当てで北見方面まで行ったとしても出会える自信があまり無かったし、その他の場所でもたくさんの蝶に出会える可能性は少ないかなと思っていた。

 「アサギマダラ関連で、以前に行ったような場所は?」とfieldさんが言ったので、帯広の南側で蝶を探す事にした。
 朝の時点で天候は曇っており、しかも、予報によると上士幌方面よりは帯広近郊の方が天候が良くなりそうな感じだったのも理由のひとつだった。

 目標としてはオオイチモンジの撮影、ミドリシジミ類の撮影、それと平行しながらアサギマダラの成虫や幼虫探しという感じだ。(結局アサギマダラ関連では成果は無かった)

 車を南に走らせた。天候は相変わらず曇っていて、気温もあまり高くない。ちょっと不安な気持ちもあったが、ある場所を過ぎるといきなり青空が広がっていてびっくりした。これなら天候の心配も無さそうだと喜びながら目的の林道に到着。しかし、様子がいつもと違っていた。

 「蝶が多い!」

 今年、天候が良くて気温が高く、蝶の観察には最適だと思える日でも、何故か蝶の姿があまり見られないという事が続いていた。春から蝶の発生時期は遅れるし、数は少ないし、一体どうなってるんだと思っていた。こんな感じで秋を迎えるのかな?と少し残念な気持ちになっていたので、今日の林道入り口からの蝶の多さは嬉しい誤算だった。

 多く見かけるのはコムラサキ、シータテハ、キバネセセリだろうか。エゾスジグロシロチョウやコチャバネセセリ、クロヒカゲなども多い。

 林道にはたくさんの蝶が止まっていて、本当に昨日までと様子が全く違う。

 これならオオイチモンジは楽勝だなと思った。

 最初に撮影したのはウラゴマダラシジミ。幼虫はイボタを食べるので市街地に多く、自分がこの蝶を初めて見たのは確か函館の実家のすぐ近くだった。

 ここ数年は見ていなかった蝶なので嬉しかった。

ウラゴマダラシジミ

 今回はこの林道を最後まで行って引き返してくる作戦だった。途中、砂防ダムがある場所があって、もしかしてそのコンクリートにオオイチモンジが来てるかもと思い立ち寄ると、そこにはおびただしい数のコムラサキがいた。

 この数の多さはなかなか写真で表現できない。多分100頭から200頭はいたと思われる。ただ、1ヶ所にごちゃっと固まっているわけではなく、ちょっと広いスペースにたくさんいる感じ。とりあえず写真は撮影した。

コムラサキの大群(一部)

 ちょっと遊んでみたくなった。コムラサキを驚かして全部飛ばしてみよう。自分は蝶の大群がいたりすると、これをしたくなる。一気にコムラサキの集団に向かって走った。

 一斉に飛び立ったコムラサキを見ると嬉しさがこみ上げてくる。こんな蝶の乱舞を見たのは今年初めてだ。蝶が少ないと言い続けてがっかりしていた今年のストレスが吹っ飛んでいくようだった。

 林道の最奥部はそれほど蝶がおらず、少し枝分かれしている違う林道に入ったりして遊んだ。

 林道入り口まであと少しというところで、オオイチモンジ発見!今日初のオオイチモンジだ。
 しかし、昨日同様、地面に止まることなくどっかに行ってしまった。

 林道中にある交差点を曲がって違う林道を走っているとき、今度は林道上に大量のキバネセセリとエゾスジグロシロチョウがいた。どうやら動物のうん子に来ているようだった。

 キバネセセリが動物のうん子に来ているのは何度も見ているけど、エゾスジグロシロチョウが動物のうん子に来ているのはあまり記憶に無い。それでも凄い数の蝶達だったので、嬉しくて撮影した。

キバネセセリとエゾスジグロシロチョウの集団。シータテハも1頭混ざってる。

キバネセセリとエゾスジグロシロチョウの集団を撮影する私
(fieldさん撮影)

 このように、蝶が集団になっている箇所が道路上だけでなくいろんな場所で見られ、やはり今日は特に蝶が多いと感じることが出来た。

青いイトトンボも見られた。

 ウラゴマダラシジミを撮影しようと思っていたとき、カラスシジミを見つけて撮影した。

 自分は蝶を撮影する場合、1枚だけでなく何枚も撮影する。ピントが合っていなかったりすることも多いので、念のために何枚も撮影する。このカラスシジミも何枚か撮影した。

 

カラスシジミ1枚目の写真

 上の写真は1枚目。そして下の写真が2枚目。蝶の大きさはトリミングで加工してあるが、それ以外でこの2枚の写真に大きな違いがある。分かるだろうか?

カラスシジミ2枚目の写真

 1枚目の写真には無いのに、2枚目の写真には卵のようなものが写っている。撮影している時点では気付かなかった。

 自宅に戻って写真を見直しているときに気付いたのだが、2枚目の写真には何やら卵みたいものが写っている。最初、このカラスシジミが産んだのかと思ったが、それにしては大きな卵のように見えるし、止まっている葉っぱがカラスシジミの食草ではない。
 しかし、よーく見てみると、1枚目の写真ではカラスシジミが卵を隠しているような位置にいて、2枚目以降は卵が見える位置に移動したのかもしれない。ちょっとカラスシジミに手品をやられてまんまと騙されたような気持ちになった。

 何度も書くが、今日はとにかく蝶の数が多い。車の中にも蝶が入り込んでくる。
 珍しくエゾスジグロシロチョウが2頭、車の中に入り込んできた。そして私に止まった。

 この蝶はあまり手乗りになる種類ではないので、私に止まったときはかなりびっくりした。そして、2頭とも私の口元に止まった。手乗りになりやすいような蝶でさえなかなか口には止まらないのに、何で2頭ものエゾスジグロシロチョウが私の顔に止まるのか。
 コスタリカでフクロウチョウが私の口元に止まったことを思い出した。

私の口元に止まったエゾスジグロシロチョウ
(fieldさん撮影)

 それにしても、何の目的があって私の顔に止まるのか。1頭は私の口の中に蝶の口(口吻)を入れてくるありさま。普段なら逃げていくくせに。
 口元に蝶が止まって口吻をチロチロやられると、かなりいずい事がわかった。

 林道の入り口まで戻り、まだ時間があるので他の林道を走ってみる事にした。
 林道入り口から少し戻った橋でオオイチモンジがいないか確かめるために車を降りると、何かのミドリシジミが縄張り争いをしていた。撮影してみたが、当然ピントが合わず、ろくな写真にならなかった。

縄張り争いをするミドリシジミの仲間(2頭ともオス)

 更に橋の下には大量のエゾスジグロシロチョウが集団吸水をする姿を見られた。今日は本当に多くの蝶の集団を目にする。嬉しくて仕方ない。

集団吸水

 橋にはコムラサキやキバネセセリ、シータテハなんかもいた。

シータテハ

 次の林道までは車で20分くらい。最初の林道ではオオイチモンジは目撃は出来たけど遊んではくれなかったので、次の林道でオオイチモンジが見られることを期待した。

 この林道では過去にオオイチモンジを1回だけ目撃したことがある程度であったが、今日のように蝶が多数見られる日ならチャンスも大きいと思った。更に、いかにもオオイチモンジを含めて多くの蝶がが吸水に来そうなポイントが2箇所ある。

 吸水に来そうなポイント1箇所目では残念ながらオオイチモンジは見られなかった。実はこの1箇所目のポイントが過去にオオイチモンジを目撃した場所だったので。「やっぱりダメかな」と思った。

 それでも蝶はかなりの数いたので期待を捨てず、2箇所目の蝶がたくさん吸水に来そうな場所に向かった。

 念のため、そのポイントの数十メートル前で車を止めて歩いて見に行く事にした。車を止めた場所から右カーブがあってポイントがある。

 そうすると、いきなりオオイチモンジの姿が目に入ってきた。林道上に止まり、湧き水のような染み出した水のような、とにかく水を吸っていた。

 やっぱりいたか!

 自分は今年既に何度かオオイチモンジとは遊んでいるので、fieldさんに先に行ってもらった。

オオイチモンジ♂。ここにいてくれてありがとう!

 すると、fieldさん、もう1頭のオオイチモンジを発見。2頭いたのか。

 さらに10mほど奥にもオオイチモンジ。結局、湧き水が出ていて林道上を流れている50mほどの間に、10頭ほどのオオイチモンジが吸水に来ていた。

 これは嬉しすぎる光景!!fieldさんも私も好きなように撮影することが出来た。

オオイチモンジの裏面

 表面の白い模様が太く感じる1頭がいたので、その1頭だけ採集した。

 しばらくオオイチモンジと楽しい時間を過ごすことができた。他にも多くの蝶がこの水場に来ていた。

 実はここから林道を更に進んだ先に、10年ほど前ツマジロウラジャノメを偶然撮影した場所がある。車で見に行きたかったが、そうするとこのオオイチモンジたちが思い思いに過ごしている水場を荒らさなければならない。なんかそれが嫌だった。

 fieldさんに「そこまでどの位かかる?」と聞かれ「15分くらいじゃないかな?」と答えたら、「それなら歩いて行くか?」と言う事になり、車を止めたまま歩いてツマジロウラジャノメを偶然撮影したポイントに向かった。

 しかし、なかなか到着しない。15分くらいと思ったが、実際は30分位かかってしまった。fieldさん、嘘ついてゴメン・・・。でも本当に15分くらいかなと思ったんだよ。

 ツマジロウラジャノメを撮影した場所には数年ぶりに来たのだが、様子が随分と変わってしまっていた。以前は他の蝶もたくさん見られたのだが、草が生い茂り、蝶がたくさん遊んでいそうな場所では無くなっていた。

 がっかりしながらオオイチモンジがいる場所まで戻った。オオイチモンジはまだ水場で吸水していたが、複数頭を1枚に納めることが出来ない。それぞれがある程度の距離を保って水を吸っているのだ。

 それでもなんとか2頭のオオイチモンジを写真に入れることが出来た。

オオイチモンジ♂

 でも、もうそんなに写真を撮りたいような気持ちもなくなってきたのでこの場を後にした。更に枝分かれしている林道などでミドリシジミ類などを探したが、雲が出てきてしまい、時間も夕方になってきたので終了とすることにした。

 
 今日は本当に良い一日になった。
 オオイチモンジに出会えたとかそういうことよりも、今年は何故か少ないと思っていた蝶がかなりの数見ることが出来たからだ。
 これまで蝶達はひっそりと私から隠れ、じーっと待って、一気に爆発させたように出現した。蝶の集団吸水や乱舞する姿を見ることが出来て、嬉しくて嬉しくて仕方なかった。いつもこれくらいの蝶達を見ていたいと思った。

 明日は3連休最終日であるが、これだけ蝶が多いなら確認しておきたい林道がある。いかにも蝶がたくさん来そうなポイントがある林道だ。本当は今日確認しておきたかったが時間も無かったので明日確認しに来ようと思った。

 そして、今日の蝶達の乱舞はもしかしたら私が着ていた服に不思議なパワーがあるかもしれない。
 妻に「蝶オタク」と言われるこのTシャツ、コスタリカで購入したものだ。
 今日はこのTシャツを着て蝶の観察に出かけた。
 朝、妻に「何か着ていくもの用意して!」と言ったら出してくれたものだ。
 以前妻に「オタク」と言われ、自分も「オタクかも」と思っていたので、タンスの奥深くに数年間眠っていたこのTシャツ、妻が出してくれたときに「これだぁ!」と叫んだ。
 こんなTシャツを持っていたことすら忘れていた。
 このTシャツが蝶達を呼び寄せてくれたのかもしれない。