夏の層雲峡探訪
2013.8.3

 数週間前、道南虫の会のMさんが十勝に来た祭、「今年の層雲峡は蝶が少なくダメだ」と言っていた。
 十勝でも、今年の初めから蝶が少なく、一体どうしたのかと思っていたが、夏を迎える頃から爆発的に蝶が増えてきた。もしかしたら層雲峡でも蝶が多くなっているかもしれないと思った。
 色々調べてみると、層雲峡のオオイチモンジに関しては、いる場所ではけっこう見られるというような情報が得られた。だけどその「いる場所」がよくわからない。
 層雲峡でのオオイチモンジのポイントと言えば「どこでも見られる」と言う感じだと認識している。もし、十勝のように爆発的に蝶の数が多くなっているならオオイチモンジはじめ、たくさんの蝶を見られるのではないかと思い、fieldさんを誘い、層雲峡方面に向かう事にした。

 やっぱり年に一度は層雲峡に行きたいと思っていた。今日は8月3日であり、オオイチモンジに関しては♀の時期としてまずまずではないかと考えていた。どこかに止まっていたら撮影、飛んでいたら採集してしまおうと思っていた。

 朝7時に家を出た。ガソリン満タン!そして、車が鳥のうん子で汚れていたので洗車もしちゃおう!と思ったんだけど、洗車場はまだ開いていなかった。車に鳥のうん子を付けたままfieldさん宅に7時半に到着。層雲峡に向かった。

 帯広を出る時には曇っていたがすぐに晴れに変わり、雲ひとつ無い晴天となった。期待できる!

 1時間半ほどで最初の林道に到着した。この林道は入り口付近で大規模に崩れていて、車で入る事は出来ない。(去年くらいから)
 なので、徒歩でてくてく歩きながらオオイチモンジ♀を探す事にしていた。歩き出してすぐにベニヒカゲの姿を見ることが出来たが、撮影は出来なかった。またすぐに見られるだろうと思い、追いかけもしなかった。ベニヒカゲの姿を見ると、シーズンが終盤に入ってきたような気がする。
 しかし、歩き出してすぐに感じた。やっぱり蝶の数がかなり少ない。ほとんど見ることが出来ない。時間もまだ早いかなとも思っていたが、それにしても十勝の今年前半と同じような感じである。

 このポイントはオオイチモンジの有名なポイントで、林道が通行可能であれば多分たくさんの採集者で賑わっていたと思われる。がけ崩れで通行できない影響なのか、それともこの林道ではもうあまりオオイチモンジを見ることが出来ないとわかっているのか、採集の人には会わなかった。そしてオオイチモンジにも会えなかった。

 蝶は1匹も飛んでいないというわけではなく、一般的に見られるような蝶が少しは飛んでいた。
 でも片道20分くらい歩いたが、ほとんどカメラのシャッターを切る事は無く、無駄に歩いてしまったという感じ。まぁ、運動にもなるしいいか。

最初の林道で見かけたホソバヒョウモン

 車に戻り、次に向かったのは個人的にこれまでオオイチモンジの♀を最も多く見たことがある林道。
 途中からは車を止めて歩くのだが、車を止める所まで行く間でも過去に何度もオオイチモンジのメスを見たことがある。
 その場所まで来ると、fieldさんが「釣れそうな場所がある」と言った。
 魚釣り道具も持参してきていたので(fieldさんが)ちょっと釣りをするかという事になった。車で川のすぐ傍まで行くことができる。

 林道を外れ、川のほうに向かおうとすると、オオイチモンジ用のトラップをかけている人がいた。とりあえず無視して釣りをする事にした。

 車を降りてfieldさんは私の分の竿の用意もしてくれている。最初に私に準備された竿を渡してくれたので、前回同様「先に釣ってやろう!」と思い、さっさと川に向かった。すると、地面にちょっと穴が開いていて、そこにオオイチモンジ用のリンゴトラップが捨ててあったので、それを川原まで持ち運び、日向の石の上において潰した。もしかしたらこのトラップに誘われて、釣りをしている間にオオイチモンジのメスが来るかもしれない。

 何度もルアーを投げて釣ろうとするが、当たりがぜんぜん無かった。対岸は崖のようになっていたのでとりあえず思いっきりルアーを投げてみた。対岸の崖に当たった。その瞬間、崖に止まっていた1頭の蝶がルアーに驚いて飛んだ。そこに蝶がいるとは分からなかったので思いっきり適当にルアーを投げたのだが、その飛んだ蝶がなんとオオイチモンジの♀だった。

 「うわっ!」と思ったが、オオイチモンジの♀はどこかに飛び去ってしまった。どちらにしてもどうしようもない位置にいたので残念だけど諦めた。

 魚は釣ることができなかった。40cmとかの大物を釣ってみたいと思っていたが、まぁしょうがないか。

 オオイチモンジ用のリンゴトラップは後から何かに使えるかもしれないので回収して、次の場所に向かおうと思ったが、先ほど見かけた採集の人がまだいたので声をかけてみた。
 するとその方はオオイチモンジを専門に研究されている方だった。今年中にオオイチモンジに関する本を出版する計画だとか、旭川に蝶の博物館みたいのを作る計画だとか言っていた。書いているらしい本の原稿なのかどうか分からないが、たくさんのオオイチモンジの標本写真(色々な国のオオチモンジや黒化型など)を見せてもらった。
 今年のオオイチモンジの♀に関しては、もう時期が遅く、見られたとしても新鮮な個体ではないだろうという事だった。例年なら新鮮な個体も見られる時期だと思っていたのでけっこうがっかりした。

 10分ほどお話をした後、次のポイント(車を止めてそこから歩く場所)に向かう事にした。そこに向かう間、車を走らせながら辺りを観察したが、やはり蝶の数は少ない。極端に少ないと言ってもいいくらいだ。

 車を止める場所まで到着し、そこから歩く事にした。蝶の数はやはり少ないが、天気が良く清々しい。向こうに見える山はまだ雪が残っていた。

林道を歩きながら撮影した写真
ちょっとした草原のような場所ではヒメシジミを見ることが出来た

 引き返そうと思っていた場所までは40分位だろうか?fieldさんと出会った10年前頃に連れて来て貰った思い出の場所だ。当時は車で来ることもできたし、そこの場所には橋がかかっていて、確かトラス橋だったような記憶もある。そのトラス橋がオオイチモンジのポイントで、fieldさんがメスを見つけて教えてくれた。生まれて初めて生きているオオイチモンジのメスを見た瞬間だった。あの時の光景は今でもしっかり目に焼きついている。上空を滑空するメスのオオイチモンジ。綺麗だった。

 その橋も数年前に大雨で崩落し、おととしくらいには工事をしていた。そして今日、そこの場所には新しい橋がかかっていた。綺麗な単純橋だったが、あたりの様子はやや殺風景になっていた。
 オオイチモンジを期待したがやはり見る事は出来ず、キアゲハやミヤマカラスアゲハ、コムラサキや小さいセセリが飛んでいる位だった。メスグロヒョウモンの♀も見ることが出来たが、メスグロヒョウモンはここ数年かなり数が多くなっているような気がする。
 

アザミで吸密するメスグロヒョウモン♀

 この橋のポイントから更に少し奥に進んだ。いかにも蝶がいそうなポイントがあった記憶があるからだ。しかし、その場所はいかにも蝶がいなさそうなポイントに変わっていた。がっかり・・・。

 引き返して車まで戻る事にしたが、何故だかとっても疲れていた。fieldさんも「歩きたくねぇ〜」とか、まだまだ車は先なのに「もう半分位来たか?」などと私に聞いていた。

 私はこの位で疲れるはずはないんだけど、かなり足が疲れていたし、右足の小指がちょっと痛かった。履きなれたトレッキングシューズを履いていたのだが、よく考えると最近あまり長く歩いていない事に気がついた。そのせいで疲れるのか・・。

 かなり疲れながら歩き、おなかもすいて、はやく車まで戻って何か食べたいと思っていたのだが、ようやく車に到着するという直前、いきなりオオイチモンジの♀が現れた!

 ちょっと遠くを飛んでいるところでオオイチモンジのメスに気がつき、指をさしてfieldさんにも確認してもらった。「メスだよね?」と言うと「多分そうだ」とfieldさんが答えた。

 オオイチモンジのメスは車がある直前の橋の近くの木に止まった。距離は遠いがとりあえず撮影した。
オオイチモンジ♀

 2,3枚撮影できた。肉眼でははっきりとオオイチモンジの♀とは確認できなかったが、撮影後に拡大して見てみるとやはりオオイチモンジの♀であった。このメスはその後どこかに飛んでいってしまった。

 小さい写真だけどとりあえずオオイチモンジのメスを撮影することが出来て嬉しかった。そして、このメスがまた戻ってくるかもしれないと思ったので、一旦車に戻り食料を持ってまた撮影した場所まで来てオオイチモンジのメスを待つ事にした。

 それにしてもこの場所は車から数十メートルである。長々とオオイチモンジのメスを探して数キロ歩き、ヘトヘトでようやく戻ってきたその場所にオオイチモンジのメスがいたのである。歩いただけ損したような気持ちが込み上げて来たが、fieldさんとあぁだこうだお喋りしながら歩くのも楽しかったからいいかと思った。

 先ほど持ってきたオオイチモンジ用のリンゴトラップを橋の端に置いて、食料を食べたり飲み物を飲んだりしながらオオイチモンジのメスを待った。結果として2,3回、オオイチモンジのメスらしき姿を見ることが出来たのだが、とても撮影できるような距離ではなかった。

 当初、この場所で1時間くらい待とうかという作戦だったが、オオイチモンジのメスを撮影できそうもないような気がして次の場所に移る事にした。もう3時くらいになっていた。

 今日最後のポイントである。ここもオオイチモンジの有名なポイントだが、オオチモンジが多く見られる場所は狭い範囲に限られているようだ。そして、この狭い範囲のポイントには車を横付け出来るので歩かなくて良い。

 そこにオオイチモンジの姿を見る事は出来なかったが、今日一番のたくさんの蝶達を見ることが出来た。
 コヒオドシ、ヒョウモン類、セセリなど、たくさんの蝶が花に吸蜜に来ていた。たくさんの蝶が見れるとそれだけで嬉しくなるので、来てよかった。

コヒョウモンかな?

 最初の林道に入った瞬間に見られたベニヒカゲはその後一頭も見られず、ようやく最後のポイントでまた見ることが出来た。ベニヒカゲに始まり、ベニヒカゲで終わったというような感じの一日になった。

 そして、蝶が爆発的に増えているかもと思った私の希望は砕かれ、道南虫の会のMさんが言ったとおり、蝶の数は総合的に考えてかなり少ないという印象だった。

ベニヒカゲ

 帰りに三国峠の展望台にある喫茶店のような所でソフトクリームを食べ、糠平にある自然博物館に立ち寄って、帯広に戻りfieldさんと別れてからガソリンスタンドで給油&朝出来なかった洗車をして帰宅した。
デジタルカメラのバッテリーは3%しか減っていなかった。