怒涛のアサギマダラ祭り!in襟裳
2013.9.21

 ここ1ヶ月ほど、休日になると天候が崩れるという日が続いていた。普段の年ならこの時期はもうシーズンが終わり近くであまり山に足を運ぶと言う事は無いのだが、今年はアサギマダラの事があるのでやきもきしていた。道南虫の会の対馬先生などから掲示板を通じて色々情報を得たりしながら、十勝近郊のアサギマダラの撮影をしたいと思っていたが、天候が悪くてはどうしようもなく、このまま今シーズン終了かと思っていた。

 この3連休、久しぶりに天候にも恵まれそうで、しかも久しぶりに妻と休日が合う。最近は妻が休日出勤等でなかなか二人で過ごす土日も無かったので、せっかくだから一緒にどっか行こうかなと思っていた。

 候補地として考えていたのが襟裳だった。襟裳に行って海の幸でもと思っていたのと同時に、襟裳でアサギマダラに会えないかなと思っていた。

 十勝や日高で夏にアサギマダラが発生していたら冬になる前に南下をする可能性がある。仮にそうだとすればアサギマダラは襟裳に集まるのではないかという予測だ。十勝や日高、もしくはそれより北のアサギマダラが南下して襟裳に集まっていればかなりの数のアサギマダラが見られるかもしれない。そうは言っても確信は無いし、そもそも南下してきているかどうかもわからない。なので、遊びがてら襟裳に行って、運が良ければアサギマダラに会えるかなと言う感じ。そして、更に運が良ければこれまで撮影した事が無いイチモンジセセリも見られるかも。

 あまり真剣にアサギマダラを探そうと意気込んでいたわけではなく、久しぶりに妻と遊びに行こうという位の感じだったので出発も8時過ぎになった。高速道路で更別まで行き、ここからは一般道を通って広尾を通過、ここからは街らしい街も無く、黄金道路を通って襟裳に向かう。途中、景色が良さそうな所で休憩したり、フンベの滝という国道沿いにある滝を見たりしながら襟裳に向かった。

ヒメアカタテハ。広尾の街を過ぎてちょっと行った所で撮影

フンベの滝。道路の右側は海

 海を見ながら南下していくと、サーフィンをしている人たちがいたのでちょっと見学。波はそれなりにあるんだけど、誰一人波に乗らず、プカプカ浮かんでいるだけ。これなら俺も出来る!!

サーフィンをしている?人たち

 広尾から襟裳に向かっている途中、豊似湖という湖があるという標識があった。この湖は何かのコマーシャルで上空から撮影されていて見たことがある。湖がハート型になっている湖で、これまで行ったことがないので寄り道してみる事にした。海沿いの国道から内陸の道に曲がり、10kmほど行った所にあるらしい。途中から砂利道の林道になった。もしかしたらアサギマダラが来ているかもしれないなと思い、注意深く観察しながら進んだ。アサギマダラの好きなヒヨドリバナは全て花の部分は枯れていて、アサギマダラをみる事は出来なかった。

 林道は途中で行き止まりになり、ここから歩いて豊似湖に行くらしい。でもわずか200mと書かれていたので歩いて向かった。数分で湖面が見えてきた。先週の大雨のせいかどうか分からないけど、湖岸には木の枝や樹が打ち寄せられていた。そして当たり前だが湖畔に立つと湖がハート型になっている様子はわからなかった。

豊似湖

 何の収穫も無く、来た道を引き返し国道に戻った。ここからまた南下して襟裳に向かった。

 襟裳岬に行く前に、ちょっと脇道に入ってみた。アサギマダラかイチモンジセセリがいないかと思って。妻に、「アザミのような赤い花を注意深く見て」と言った。函館でアサギマダラはヒヨドリバナが好きでよく吸蜜に来ていたので。自分は車をゆっくり走らせながら進行方向の右側を見て、妻は左側を見ながら進んだ。妻には「今の時期にここでセセリがいたらイチモンジセセリの可能性がが高い」と伝えていた。

 すぐに妻が「あれ?止めて。ちょっとバックして」と言うので、車をバックさせると「セセリがいるよ」と言った。イチモンジセセリかもと思いすぐに車から降りて見てみるとやはりイチモンジセセリだった。妻ナイス!!

イチモンジセセリ(初撮影)
 
 ウラジャノメに続き、初撮影の蝶が今年2種類になった。嬉しかったが風が少し強くてなかなかピントが合わせられず大変だったのと、コチャバネセセリやオオチャバネセセリと似ていて、しかもあまり綺麗じゃないので熱心に撮影する気になれず、ちょっとしてどっかに飛んでいってしまったのを追いかける気にならなかった。この後違う場所でも1頭目撃して撮影することが出来た。

 車に戻り、道を進んでいたら妻が大きな声で「あっ!」と言った。びっくりして車を止めたら「シカちゃんだ!」って。確かにシカがいてこっちを見ていたんだけど、シカなんて珍しくもなんともないんだからいちいち叫ばなくてもいいって。

こっちを見ているシカ

 道は登りになって、標高が上がってきた。もう車のカーナビには道が付いておらず、ここ10年位で出来た道なのかもしれないなと思いながら進んだ。

 しばらく登りが続いた後、平坦な道になった。アサギマダラの好きそうなアザミはほとんど無く、黄色い花がたくさん咲いていた。

 それでもどこでアサギマダラが現れるかわからないと思い、ゆっくり車を進めていたとき、それは突然目に飛び込んできた。道路脇の黄色い花になんとアサギマダラがいたのである。

 びっくりして車を急ブレーキで止め「アサギマダラいた!!」と叫ぶと、妻は「うそーー!」と言った。この妻の「うそーー!」という感じは、あたかも自分が嘘を付いていると言わんばかりの「うそーー!」で、本気にしていない感じだった。どうせ妻は最初からアサギマダラが襟裳にいるとは思っていなかったようである。

 でも目の前には本当にアサギマダラが黄色い花に付いている。カメラを持って車を飛び降り、とりあえず証拠写真の撮影。妻には網を用意してもらった。
 車からの距離2mほど。よく逃げないでいてくれたものである。

襟裳で撮影したアサギマダラ

 とても綺麗な個体で、多分北海道で生育したものだと思われた。警戒心があまり強くないのか、近づいても逃げない。これは撮影し放題で、飛んだら採集しようと決めたのだが、運が悪い事に後ろからバイクが来てしまった。林道の道幅が狭く、自分の車が止まっているためバイクは前に進めない。仕方ないので撮影を中止してアサギマダラを網で捕獲してバイクを通した。

 もっと撮影したくて残念だったが仕方ない。
 採集したアサギマダラは未交尾のメスだった。記念にと思いマーキングして放す事にした。

 実はこの辺りから記憶が定かではない。それはこの後、怒涛のアサギマダラ祭りが開催されたからである。

 アサギマダラを採集し、バイクを行かしてから車に戻ろうと思ったとき、何故か今までアサギマダラが吸蜜していた同じ花にまたアサギマダラがいたのである。「あれ!?またアサギマダラがいる!!」と言って撮影した。妻に網を渡し、「飛んだら採って」と言ったのだが、飛んだアサギマダラは妻の網をうまくかわしどっかに行ってしまった。
 今連続で2頭いたんだから、きっとこの辺にはもっといるはずだ!と探してみたら、案の定他にも何頭かアサギマダラが黄色い花で吸蜜していて、写真を撮ったり網で捕獲したりした。

エリモ TS001 9/21

マーキングしたアサギマダラを放した瞬間

他にもいたアサギマダラ
こいつはオスだがだいぶ羽が切れている
本州育ちの旅をしてきた奴なのか、それとも北から南下してきたのか

ちょっと余裕が出てきて広角でも撮影

捕獲したアサギマダラ3頭を手に持つ妻
「お尻が長くてちょっと気持ち悪い」だって・・・

 この数分で5頭アサギマダラを見て4頭捕獲。全てマーキングして放した。それにしてもビックリ。こんなにアサギマダラがいるなんて。
 襟裳にアサギマダラがいる可能性が高いという対馬先生の言葉でここまで来たが、まさかの展開。作戦が大当たり過ぎる。そして楽しすぎる!

 ここに留まっていればもっとアサギマダラが飛んでくるだろうと思ったが、移動しても見られる可能性が高いと思い、車に乗り込み注意深くゆっくり進みながらアサギマダラを探した。道路脇の花の蜜を吸っているアサギマダラを見つけては車を止めて撮影したり、場合によっては撮影せずに捕獲してマーキングしたり。

 崖の上にアサギマダラらしい蝶を見つけて恐る恐る崖を登り捕獲したり。

黄色い花で吸密するアサギマダラ

 今日はアサギマダラやイチモンジセセリに会えるかどうか確信が持てなかったので、ゲンをかついでチョウチョTシャツを着て来た。この前横津岳で「狂乱のアサギマダラ祭り」の時に着ていたTシャツである。このTシャツ、何かパワーがあるのかも・・・。

 どうも傾向としてアサギマダラを見つけると「あ、ここにも!」という感じで複数頭見つけることが多かったような気がする。そして、なかなか警戒心が弱く、簡単に採集できる。

2頭のアサギマダラとチョウチョTシャツで記念撮影

 ある程度進んだ所で道が急に下りになり、更にアサギマダラの姿も見られなくなってきたので戻る事にした。戻ったほうがまたたくさん見られるかなと思って。

 ここまでで10頭位目撃し、そのうち8〜9頭位にマーキングしたように記憶しているが、ちょっと定かではない。

 戻っている最中にはさっきマーキングした007番を再捕獲したりもした。

 今日最初にアサギマダラを目撃し、撮影・捕獲・マーキングした所まで戻ると、またアサギマダラが黄色い花に来ているのが見えたので撮影しようとしたら、まさに最初に捕獲してマーキングした個体であった。
 最初にアサギマダラを発見したのが大体11時半。そしてぐるっと周って11頭目撃し、そのうち9頭マーキングと言う結果がここまでの記録である。時間は1時半。大体2時間での成果である。

001番のアサギマダラ
捕獲して放した同じ場所にいた。この間約2時間

 どうせなら10頭マーキングしたいと言う目標を途中から持ってアサギマダラを探していたのだが、最後の最後に1頭発見し撮影、捕獲、マーキングが出来た。

最後に見つけたアサギマダラ

010とマーキング。今日10頭目

 最終成果としては12頭目撃、内、10頭捕獲、マーキングというものだった。

 捕獲した10頭の内訳はオス3頭、メス7頭で、メスは全て未交尾であった。

 豊似湖なんかに寄り道しないで最初からここに来ていればもっとたくさんアサギマダラを見ることが出来たと思うとちょっと残念な気持ちもあったが、元々アサギマダラ狙いで意気込んで乗り込んできたわけでもないし、運が良ければアサギマダラに会えるかな?位の気持ちだったので、自分で言うのもなんだが、この成果は凄いと思う。まさかこんなにアサギマダラが見られるとは思わなかった。それにイチモンジセセリも。

 先月は函館近郊でたくさんのアサギマダラに会うことが出来たが、同じ北海道でも渡島半島ではない襟裳でこれだけたくさんのアサギマダラを見ることが出来たのはまた違った意味で重要な記録になると思う。

 今日で出合ったアサギマダラたちが無事に南下してまたどこかで再捕獲されて欲しいなぁ〜と思った。

 大満足で機嫌もよく、そのまま襟裳岬に向かった。

 もしかしたら襟裳岬の本当の先端あたりに、南へ向かう直前のアサギマダラが勢揃いしているかと思ったのだが、1頭もいなかった。天気予報に反して空は暗く曇り、風が強かった。

襟裳岬の灯台

襟裳岬の先っちょ

岩場にいた鳥

 襟裳岬のお土産屋さん兼食堂には、うに丼とか海の幸がたくさん売っていて、今日の成果を祝ってうに丼を食べようと思い、店に入った。
 何件かあるうち、私の好きなイカ刺しも売っている店に入ってたら、寿司屋の魚が入っているケースみたいのがあって、そこにイカが置いてあった、真っ白で活きが悪そうだったが、席に座り注文をしようとすると、うに丼は売り切れたとのことだった。活きの悪いイカ刺しだけ食べても面白くないので何も頼まず店を出た。そして襟裳岬を後にして、襟裳の町に向かった。そこでは海産物屋さんがあったので入ってみると、活きているボタンエビや貝類が売っていたので、ボタンエビ、ホタテ、白貝、ツブ、あと冷凍のタコを買った。ボタンエビは1匹180円、白貝は1個50円など、けっこう安かったので嬉しかった。
 また、何故か小さい40cm位のマンボウがいて、大きな四角い皿のようなものに横たわっていた。このマンボウ、まだ生きていてヒレをバタバタ動かしていた。口もパクパク動いていて、いかにも「苦しいよぉ〜」と言っているようで可愛そうだった。なんだか、目と目が合った様な気がしてますます可愛そうになり、見てられない。でも店の人が「もう死にかけている」と言っていたので、海に逃がしてもどうしようもないんだなと思った。

 帰宅後、これらを刺身にしての夕食になった。

刺身

白貝の酒蒸し

ツブ

 妻はおいしくいただいていたが、活きが良すぎて自分はちょっと苦手だった。ボタンエビは透明で美味しそうだったが歯ごたえがコリコリして良かっただけで味は特に感じなかった。襟裳の海産物屋さんは「死んで少ししてからの方が旨味がある、活きが良すぎるのは歯ごたえだけだ」と言っていたが、その通りだった。

 タコは水っぽくてイマイチ。ホタテも歯ごたえは最高でコリコリしていたが、ちょっとヌルヌルしていて。
 でも自分は最初から海産物はあまり得意ではないので、妻が喜んでくれて良かった。

 今日は私も妻も携帯電話を持たずに(忘れて)出かけたのだが、帰宅後、fieldさんから不在着信があった事に気付き連絡してみた。中札内でアサギマダラを撮影したと言うものだった。
 まだ南下していないアサギマダラもたくさんいる可能性を示している。

 アサギマダラの生態についてはここ数年で北海道から本州へ、本州や九州から北海道への渡りが確認されたり、道南で幼虫や蛹の発見があったり、だいぶ解明されてきているが、それでも不明な事も多いと思う。今回の記録もそんな分からない事だらけのアサギマダラの生態を知る上での助けになるかもしれない。