手乗りオオイチモンジ

2012.7.7

 先週(7月1日)にはまだ帯広のポイントでオオイチモンジは確認できなかった。その時「来週なら確実だろう」と思っていた。実は昨年、帯広のポイントで7月9日にオオイチモンジの綺麗なメスを採集していたので、昨年並みなら7月1日に雄がいてもおかしくないだろうと思ったのが誤算だった。オオイチモンジに限らず蝶はメスよりオスのほうが早く発生する傾向があるので、7月9日にメスがいたなら7月1日にオスがいてもおかしくないという予想だったのだ。

 でも、今日(7月7日)なら少なくともオスは確実だろうと思っていた。ただ問題は天候。今年はいつも週末の天候が悪い。そして今日も曇りの予報。朝起きると予報どうり空は厚い雲に覆われていた。

 これじゃぁ山に行ってもしょうがないやと思ったが、最新の天気予報を確認すると昼間に少し晴れ間が出るようだ。家でゴロゴロしていても他にする事も無いし、山に行けば晴れるかもしれないし、もし晴れなかったとしても蝶以外の何かに出会えて楽しいことがあるかもしれないと思い、とりあえず先週と同じ帯広のポイントに行く事にした。

 到着したのが10時くらい。やはり曇っている。でも車を降りて散歩でもするような感じでブラブラ歩く事にした。とりあえず網は持たずにカメラだけ持って。

 曇っているのでほとんど蝶は出てこないかと思ったが、花にギンボシヒョウモンが止まっていた。
 ギンボシヒョウモンは別に撮影したくも無いんだけど、他に何もいないのでしょうがないというか、遊び相手になってくれるだけありがたいという気持ちだった。

 で、次に遊んでくれたのがクロヒカゲ。こいつこそ普段なら完全に無視する蝶だ。でも後翅の蛇の目模様の淵が少し光っていて、よくみるとなかなかかっこいい。
 更にもっと普段無視の蝶がコチャバネセセリ。この時期にはたくさん見られるが本当にハエみたいでうるさい。(音はしないが)
 でもしょうがないので撮影した。
 こんなのしか撮影するものが無いなんて、さすがに面白くないなと思いながらプラプラ歩き、先週蛇がいた場所に到着した。ここの場所には小屋があって、オオイチモンジもやってくるし色々な蝶が壁にたくさん止まっている光景が毎年見られる。今日はキマダラヒカゲとクロヒカゲ、コチャバネセセリ位しかおらず、しょうがないのでクロヒカゲを撮影した。

 もう全然面白いものも無いんだけど、散歩していると思えばなかなか楽しい。鳥の声を聞いたり植物を見たり、クワガタでもいないかなと木の樹を見たり。

 歩いているとまたギンボシヒョウモンがいた。ギンボシヒョウモンはけっこうたくさんいるみたいだったが、ちょうど羽を開いてくれたので撮影した。
 ヒョウモンというのは豹の紋の事なのだが、こうやって見るとなかなか綺麗だ。でも普段はあまりよく観察する事も無い。ギンボシヒョウモンは日本の南側にはいない蝶なので、珍しいと思う人もいるんだろうけど、北海道では完全に普通種。

 林道をずっと歩きながら散策。クマでも出てくるんじゃないかと思いながらもプラプラ歩く。林道にはたくさんの動物の糞が落ちていて、そこにコチャバネセセリやらキマダラヒカゲやらがたくさん寄っている。オオイチモンジも一緒にいてもいいなと思うんだけど姿はなし。大きなクマの糞も落ちていたけど何日か前のもののようだ。

 完全に蝶モードから散歩モードになっていたが、林道脇のイラクサに恒例のあいつらを発見した。
 こいつらはクジャクチョウの幼虫だ。黒くてトゲトゲで、普通なら「ギャァー!」って言う人がほとんどだと思うけど、成虫の美しさを知っている自分には可愛く見える。持って帰りたい・・・。

 数年前、このクジャクチョウの幼虫を自宅に持ち帰った。飼育ケースに入れて育てていたんだけど、フタを閉め忘れたのか仕事に行っている間に脱走した。先に仕事から帰ってきた妻が発見し、泣きながら割り箸で1匹ずつ掴んで戻したということがあった。当然怒られた。なので、今日また持ち帰ったら怒られる事確実である。
 ある年は仕事に行っている間に部屋の温度が上がりすぎたらしく、ほとんど死んでしまった事もあった。クジャクチョウも本州では高山に多いらしく、高い気温が苦手のようである。死んだ幼虫を処理するのはけっこう大変で嫌な匂いもする。でも、クジャクチョウが羽化したら本当に綺麗だ。
 色々悩んだ結果、やっぱり持ち帰るのはやめた。

 更に奥へ歩いて行くと、ついにオオイチモンジを発見した。が、望遠レンズに付け替えている間にどこかへ飛んでいってしまった。また戻ってくるかと思ったけど残念ながら戻ってこなかった。

 そこから少しした所にまたオオイチモンジがいて、今度は何枚か撮影させてくれた。今年初めてのオオイチモンジの撮影である。

 このあたりではミスジチョウもけっこう見ることが出来て、撮影した。

 だんだん歩き疲れてきた。車を降りた場所から大体4kmほど歩いた。ここから少しまた歩いたんだけど、何もいなさそうなので引き返す事にした。
 引き返して少ししたら、林道にまたオオイチモンジの姿を発見した。
 さっきはちょっと遠くからの撮影だったんだけど、今度は近くから撮影したいと思い、少しずつオオイチモンジに近づいた。近くに行けばオオイチモンジも少し飛んで離れて止まる。また自分がオオイチモンジに近づくとオオイチモンジは少し飛んでというのを繰り返しているうちに、オオイチモンジのほうから自分に近づいてきた。自分の周りを飛んだり靴に止まったりするようになってきたので手を出してみたら手乗りになった。

 オオイチモンジは手乗りになりやすい蝶で、これまで何度か手乗りオオイチモンジを楽しんだことがある。きっと、自分の手の汗とかを吸いたいんだと思う。
 一度手乗りになるとなかなか逃げないので、手乗りオオイチモンジを撮影した。綺麗なオスである。

 このあたりから少しずつではあるが日差しが出てきた。日差しを浴びて歩くと汗が出てきて結構疲れた。車まで戻るのが面倒だったけど、戻るしかないのでテクテク歩きながら車まで戻った。日差しが出てくるととたんに蝶の数も多くなるんだけど、コチャバネセセリとかキマダラヒカゲが多くて面白くない。オオイチモンジは出てこなかった。

 車まで戻るとけっこう疲れていたんだけど、今歩いてきた道を今度は車で行く事にした。晴れ間は無くなりまた曇り空になっていたんだけど、またオオイチモンジが見れるかなと思って。結果から言うとオオイチモンジは見れなかった。
 でも、林道でくつろいでいるキツネを見ることが出来た。どうやらまだ子供のようである。車の中から撮影した。

 このキツネ、こちらを見ているんだけどなかなか逃げない。自分は車を止めて車の中から撮影し、そーっとゆっくりキツネに近づきながら車を進めた。でもキツネは逃げなかった。

 自分の中でこのキツネの物語が完成していた。

 この子ギツネは今年生まれたんだけど、つい最近親離れをした。キツネの親離れはテレビで見たことがあるんだけどけっこう悲しい。甘える子供に対し親ギツネは威嚇したり噛み付いたりして子供を近づけないようにして親離れさせるのだ。
 そしてこの子ギツネはつい数日前に親離れをして寂しがっている。そしてまだ自然の中で生きる経験も不足していて、車を見たり人間を見たりしたことが無いのでこんな林道のど真ん中でへたり込んで一人悲しみに暮れている。

 ように見えた。

 結局かなり近づくことが出来、カメラの画面にかなり大きくにキツネの姿が入るくらいまで近づくことが出来た。
 近づいて見たキツネの表情はやっぱり悲しそうである。こんな大自然の山の中でひとりぼっち。寂しさと不安な顔をしている。

 ように見えた。
 でも自分としては何もしてあげられない。そうしているうちに子ギツネが林道脇の草むらに逃げていった。後ろからけっこうのスピードでパジェロが来たのでそれにビックリしたようだ。
 いずれにしても無事に大きくなって欲しいなと思った。

 それから車でいくつかのポイントを巡ったが面白いものも見つけられず、飽きてきたので帰る事にした。今日はヘビには遭わなかった。

 オオイチモンジのオスの発生はこれからがピークで、メスの発生は今度の週末前位かなという感じだろうか。メスを見ることが出来たらいつも撮影前に採集しちゃうんだけど、今年は運よくメスを見れたら採集する前に撮影したいなと思う。