オオゴマシジミ
Maculinea arionides takamukui
2009.08 松前町
成虫

2009.08 松前町
成虫♀産卵
2003.08 松前町
成虫
2003.08 松前町
成虫
2009.08 松前町
成虫(吸蜜)

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 北海道に棲息する蝶の中でもオオゴマシジミはかなりレアな蝶と言えます。発生地が極めて局地的だということと、発生時期が短いということと、そもそも個体数があまり多くないと言うのがその理由です。

 ただ、発生地については今まで渡島半島と後志地方と言われていましたが、最近になって新十津川町あたりでも発見されたという事でもう少し詳しく調査する必要があるように感じます。

 発生時期は7月下旬から8月中旬頃とかなり短く、これらの理由から、簡単に山に行って見つけられる蝶ではありません。

 オオゴマシジミは成虫になるまではちょっと変わった生態を見せてくれます。

 卵から孵化した幼虫は最初、クロバナヒキオコシやカメバヒキオコシなどの花や蕾を食べて育ちますが、4齢幼虫になると、クシケアリやヤマアシナガアリにより、アリの巣に運ばれます。

 オオゴマシジミの幼虫は、それらのアリの幼虫を食べる代わりに、体から甘い蜜を出して、それをアリにプレゼントするのです。そしてアリの巣の中でサナギになって、夏に羽化します。羽化はアリの巣の中で行われますが、もたもたしていると羽が伸びてしまいアリの巣穴から出られなくなるし、オオゴマシジミの成虫はもう蜜を出さないのでアリにとっては敵(餌)になります。ですから、羽化したオオゴマシジミの成虫は羽が伸びないうちに大慌てでアリの巣から脱出します。

 私はその様子を観察した事はありませんが、想像するとなんだかおかしくて笑えてきます。しかしオオゴマシジミにとってはとても大変で、巣穴から出る途中でアリに捕まったり、羽が伸びてしまい巣穴から出られなくなって死んでしまうものも少なくないのではないでしょうか?そんなこともあり個体数が多くないのかも知れまっせん。

 生息環境としては食草があることと、そこにアリがいることが条件ですが、そんな環境が揃っていても全然見られないこともあるし、何故か渓谷沿いのところに多くいて、山に行くと、いかにもオオゴマシジミがいそうな場所が感覚的にわかります。

 よく、気温が低い夏は蝶の発生が遅れたり、暑い夏は早かったりと、蝶の発生と気温には密接な関係がありますが、オオゴマシジミの場合、さらに地熱の温度が重要になります。いくら外が暑くても、アリの巣の中の温度がある程度上がらないと羽化は遅れるようです。

 似ている種類にゴマシジミがいて、生態も似ている部分がありますが、個体数や分布範囲で考えると、オオゴマシジミの方がかなり珍しいです。

 表側の羽はブルーと黒の模様でゴマシジミとあまり変わりませんが、裏側の模様はオオゴマシジミの方がゴマ模様が明らかに大きいのですぐに区別できます。


分布:北海道では渡島半島から空知地方の一部(局地的)
    北海道以外では東北地方の山地、栃木、群馬の山地、新潟、富山、石川、岐阜県の1000m以上の山地に分布しているようです。

発生:年1回、7月下旬から8月中旬まで。

食草:クロバナヒキオコシ、カメバヒキオコシの蕾や花を食べ、4令になるとクシケアリやヤマアシナガアリの巣に運ばれ幼虫を食べる。

越冬:幼虫