ケツアール観察ツアー
(1月5日)

 本日から本格的にコスタリカでの活動となります。初日とも言える今日はいきなり朝早くからになりました。

 昨日の10時過ぎにサンホセ市内のホテルに到着しましたが、それからわずか数時間後の朝4時に、ホテルのロビーに迎えが来る予定になっていました。

 サンホセは1泊だけなので、すぐに再度荷造りをしなければなりません。前夜は11時に寝て、3時に起き、次のホテルへ行く準備です。今までは1ヶ所にずっと滞在する旅でしたが、今回は数ヶ所移動するので荷造りが大変な作業になります。これらの仕事は全て私の担当。夫はカメラの管理のみです。
 前日飛行機の中で眠れなかったので、熟睡しました。もう時差は無いようです。

 3時過ぎに起きて準備し、3時40分頃にホテルのロビーに行きました。まだ真っ暗です。ロビーにはコーヒーやクッキーが置いてあって自由に食べて良いと言われていたので、誰もいない早朝のロビーでクッキーでも食べながら迎えの車を待とうかと。

 しかし、ロビーに行ってすぐに迎えの車とドライバーさんが来ました。名前を確認され、ワゴン車に乗り込み、ケツアールの住む所に向けて出発しました。もちろん私はどこに連れて行かれるのか全くわかりませんが。

 あわててクッキー2枚を持って車に乗りました。

 まだ早朝だったので車の通行も少ないのですが、旅行の中盤から後半には自分でレンタカーを借りて走る予定もあるので、ドライバーさんがどんな運転をするのか観察しながら行こうと思いました。

 すると、私たちの乗った車は何故か赤信号なのにどんどん進んでいきます。赤信号って進んでいいの??
 どうも交差点が赤信号であっても、安全であればそのまま交差点を通っていいようです。赤信号で止まっている車に、後ろから来た車がクラクションを鳴らして「早く行けよ」って感じでやっているのも見ました。
 赤信号でも安全なら進んでいいなんて、危険な運転をするんだなぁ〜と思った反面、なるほど合理的だとも思いました。日本では赤信号では必ず止まりますが、どう考えても交差点には他に車がいなくて信号無視しても安全な場面ってあるじゃないですか。だけど日本はルールを守ることを第一に考えて止まっています。
 コスタリカではとても合理的な赤信号の解釈をしているんだなと感心しました。

 一度中心街のような所でしばらく待ちました。運転手さんが下りて近くのホテルに一旦入りましたが、そのまま車は発車しました。後でわかったのですが、そこがゴジツアーが入っているホテルでした。
 
 そういえばボルネオでは曲がり車線に入った車はウインカーを出さずに交差点を曲がります。曲がり車線なんだから曲がるの当たり前だからいちいちウインカーを出さないんです。これも合理的だと思いました。

 ホテルを出て15分か20分ほどした頃です。突然運転手の携帯電話が鳴って車が止まりました。運転手の人が少し携帯で話をして、その後Uターンしました。けっこうな勢いで走りながら、来た道を戻ります。私は「どうしたのかな」と思ったのですが、妻は「ホテルに戻るみたいだよ」と私に言いました。

 何でホテルに戻るのか意味がわかりませんでしたが、もしかしたら他にもケツアールツアーに行く人がいて、その人を乗せ忘れたのかなと思いました。

 けっこうな勢いでホテルに戻りました。すると一人の中年くらいのオッサンが三脚を持って助手席に乗り込んできました。日本人みたいな感じに見えますが、スペイン語と思われる言葉を話しています。私は黙っていましたが、「なんか胡散臭いオッサンだなぁ」と感じました。

 車はそのオッサンを乗せてすぐに出発しましたが、オッサンはいきなり日本語で私たちに話しかけました。

 「今回、ガイドをさせていただく加瀬と申します」と言いました。

 最初見た目が怪しかったんだけど、普通な感じで話してきたのでちょっと安心したのと同時に、運転手の人がガイドを忘れて出発したんだとわかりました。

 加瀬さん「ロビーに迎えに来る時間は4時でしたよね。10分前に来たのですが、時間になっても降りてこないのでさがしましたよ。置いていかれたのは初めてです」
 私「クッキーを食べたかったので・・・。でも食べられませんでした。」

 

 で、色々話しながらケツアールのいる森に向かいましたが、その中でこの加瀬さんは私たちがコスタリカ旅行を依頼したツアー会社の代表であること、年が36歳で自分よりひとつ下な事、鳥が好きなことなどがわかりました。
 ツアー会社の代表さんがわざわざ私たち夫婦のためにガイドをしてくれるなんて事は普通考えられないので、きっとこのツアー会社はとても親切な会社なんだと感じました。

 加瀬さんが言いました。「あなたたちは北海道から来ているから、水曜どうでしょうという番組をしっていますか?」と。

 もちろん知っています。ずいぶん前に終わっちゃったけど、いつも見ていた番組でした。大泉洋とミスター達がサイコロの出た目に従って旅をしたり、ベトナムを原付で走る旅をしたりする番組です。

 その中で、水曜どうでしょうのメンバーがコスタリカに来てケツアールを探すという企画があったのですが、それを覚えているかとたずねられました。詳しいことは忘れたけど、そういえばそういう企画が確かにあったなという位では覚えていました。

 中には「どうでしょう」と同じ行程をたどるのを目的にコスタリカまで来た人もいるそうです。人によって価値観は違いますが、かなりの「どうでしょう」マニアがいるようです。

 加瀬さんは北海道の人ではないから、本州の友人を介してそのテレビを見ているのか、水曜どうでしょうのファンのようでした。本州では今やっているみたいです。

 更に、私たちが北海道ということで、「北の国から」について語りだしました。加瀬さん本人は見たことがないらしいのですが、やけに詳しいです。友人からドラマの内容を聞いているらしく、「本当にルールルルと言えばキタキツネが寄ってくるのか?」などと私たちに聞いていました。
 純のこと、蛍のこと、父さんや中ちゃんの事など、見たことも無いのに何でそんなに詳しく知っているのか?と思いました。

 「私は一度見だすとハマル性格で、次が待ちきれなくなるから見ないんです」と加瀬さんが言いました。
 さすがにコスタリカで北の国からをレンタルして見るわけにはいかないですからね。

 私は運よく北の国からのDVDを全部持っているので、加瀬さんに「見せてあげるけど」という様な事を言ったら、加瀬さんは本気で悩んでいました。「見たいけどなぁ〜」(でも見たらはまりそうだから仕事が手に付かなくなる)
「どうしようかなぁ〜」「送ってもらおうかなぁ〜」と。この時点で私の心の中ではもう加瀬さんに送ることが決定していました。

 何でコスタリカまで来て北の国からの話をしているのかよくわかりませんでしたが、なんとなく私たち夫婦と加瀬さんも溶け込んで、楽しく話しながらケツアールのいる森に向かっていました。

 車は舗装道路の峠を上って行きましたがそこから砂利道になり、林道を上って行きます。外もだいぶ明るくなっていました。途中一度トイレ休憩になったので車を降りると、空気がひんやりしてとても気持ちよかったです。そこで加瀬さんに「この辺は標高どのくらいですか?」と聞くと、だいたい2600mという返事でした。

 え〜っ!!!

 2600mって北海道最高峰の旭岳より高いじゃん!!そんなところまで上っていたなんて。しかも、景色を見ると標高が高いところにいるなんて全く感じないほどの森があります。北海道なら木が生えられない位の標高だと思うんだけど。

 「この標高にこれだけの植物が生息できるのは熱帯雲霧林という特殊な気候のせいなんです」と加瀬さんが教えてくれました。この言葉(ネッタイウンムリン)の漢字を理解したときに、「あ、これは屋久島と同じような事だな」と、ピンときました。

 海で暖められて蒸発した水蒸気が陸地の山づたいに上っていって雲をつくり、霧のような雨が降る。この霧が標高の高い地域で植物を生育させる重要なポイントになっているそうです。
 
 コスタリカは太平洋とカリブ海に挟まれた細長い地域にありますから、そういう特殊な気候があるんだなと思いました。

 トイレ休憩が終わって、また車に乗り込み、少し林道を走りました。もう完全に明るくなっていて、もう少ししたら蝶がたくさん出てきそうだなと思いながら車の窓の外を眺めていました。

 そうこうしているうちに車はケツアールの見られるポイントに到着しました。

 外に出るととても寒く、長袖シャツ+パーカー+フリースという北海道発の服装でちょうど良いほどの気温です。
 見渡すとみたことのある広場です。


 妻が「あれ?ここって水曜どうでしょうでやってた場所じゃない?」と言いました。



 加瀬さんは「そうです!よくわかりましたね」と嬉しそうでした。

 私が近くにあった家を見て「あ、この建物もテレビに映っていたような」と言うと、加瀬さんが、

 「この建物は映っていません」だって・・・。

 車から少し歩いたところで加瀬さんが「あ、もうケツアール発見!」と言いました。

 どこどこ???私にはどこにケツアールがいるか全くわかりません。

 「ほら、あそこの木のところ」と指差されても全くわかりません。

 加瀬さんが三脚に望遠鏡をセットして見せてくれました。

 望遠鏡をのぞくと、「あ、本当にケツアールがいる!!」

 今まで見たことのない鮮やかなブルーと赤です。美しさに見とれてしまいました。

 とても嬉しくなりました。いきなり今回の旅の目的のひとつであるケツアールが見れたのです。だけど、望遠鏡から目をはずして肉眼で見ようとするとどこにケツアールがいるかわかりません。まだ距離が遠いようです。それにしても加瀬さんは凄い!私が全く見えていないのにケツアールを見つけられるんだから。

 少し近づいて、私がケツアールを肉眼で見れる位置まで行き300mmのレンズを装着して撮影してみました。300mmで撮影してもこんな感じで小さくしか写りません。
 

画面中央にケツアールがいます。わかります?


加瀬さんの望遠鏡をのぞく妻。
この視線の先にケツアールがいる。

 私たちのほかにもケツアールを見に来た外人の観光客と思われる人が数名やってきて、斜面を登ってケツアールに近づいて行きます。私たちはもう少しここでケツアールを観察しました。

 しかし、私の300mmレンズでは遠すぎてなかなか写真になりません。すると加瀬さんが、

 「小さいデジカメのSDカードだけ貸してください。秘策があるので」と言いました。

 そしてSDカードを渡すと、望遠鏡に加瀬さんのコンパクトデジカメを装着して、私たちのSDカードを入れました。
 いわゆるデジスコという、望遠鏡にデジカメを装着して写真を撮る方式でケツアールを撮影するのです。それで撮影されたケツアールの画像が以下のものになります。
 

 ソニーの一眼レフ+300mmレンズよりもかなり大きくケツアールが撮れています。しかし、このアングルだと背中しか撮れませんでした。それにしても尾羽が長い!

 ケツアールは世界で一番美しいとも言われている鳥で、あの手塚治虫の「火の鳥」のモデルになった鳥とも言われています。尾羽が長いのは雄だそうです。

 ケツアールがなかなかこちらを向いてくれないので、私たちも斜面を上ってケツアールに近づくことにしました。それにしても少し歩くと息が切れます。標高2500m位の場所と加瀬さんが言っていましたが、空気が少し薄いようです。

 斜面を「ハーハー」いいながら上ってケツアールに近づくと、肉眼でもはっきりケツアールを見ることが出来、また、300mm、レンズでもけっこう良い大きさでケツアールが撮影できました。

 ケツアール自身も色々動きますから、斜面を上ったり下りたりして、色々なアングルからケツアールの撮影をしました。

自分のデジカメでケツアールを撮影

 このケツアール、とても可愛らしく、枝に止まったまま頭だけを動かしていろんなところを見ています。私たちの様子も気になっているみたい。

 今度は顔が見えました。可愛すぎ!

 ただ、辺りはまだ陽もさしていなくて薄暗い感じ。カメラのISO感度はオートに設定していますが、ほとんど1600になっていて、けっこうな高感度撮影ということになります。ノイズがけっこう出るんじゃないかと心配しましたが、案外しっかり映ってくれました。

 その後、ケツアールは枝を行ったり来たり。私はデジカメで撮影に夢中になりました。ケツアールが移動すると私も撮影しやすい位置に移動してシャッターを切る。

 そうこうしているうちにケツアールの数がだんだん増えてきて、1本の木に5羽の雄と雌のケツアールがいるという状況になったり。何度も来ている加瀬さんでさえ「こんなことは滅多に無い」と興奮していました。

 以下にここで撮影したケツアールの写真を数点紹介します。

ケツアールの雄

ケツアールの雌

こっちをうかがう雄

胸からお腹にかけては赤い

こんな可愛い顔(トリミング)

 デジタルカメラで撮影したり、デジタルビデオカメラで撮影したり、飛ぶところを見たり鳴き声を聴いたり、一度見てみたいと思っていたケツアールにこんなに簡単に出会えて、またたくさんの姿を見ることが出来て大満足しました。
 ここで紹介している写真は少ないですが、撮影枚数は300枚を超えました。
 蝶に関しても鳥に関しても、どんな姿かたちを美しいと思うかはその人の主観になると思いますが、私はこんなに可愛い鳥を見たのは初めてです。

 だんだん陽が高くなってくるとこの場を去ってしまうということで、私たちもここを後にすることにしました。

 1時間半ほどケツァール観察をしていました。寒さになれている私たちでも耳が冷たくなっていました。

 車に戻る途中、民家から女の人が出てきて加瀬さんと挨拶をしていました。

 「家の中が寒すぎて外に出てきたようです」と教えてくれました。
 私は暑くて半袖になっているというのに。

 また、このケツアールのポイントは農園のようです。今民家から出てきた女性がこの農園をやっていて、加瀬さんは月単位でお金を払って契約して、私たちのような観光客を案内しているらしいです。

 車に戻り、来た道を戻っていきました。最初トイレタイムで立ち寄った場所で朝食になりました。

 途中、加瀬さんから朝ごはんの提案がありました。
 1 ちゃんとしたレストラン
 2 この地方でしか食べられない、とてもおいしい朝ごはん
 3 地元のおばちゃんが作るたいしたことのない朝ごはん。でも鳥がたくさん見られる

 もちろん鳥を見ることができる朝ごはんです。悩まずに即答しました。


 あまり美味しくないと聞いていたのですが、景色が良くて鳥たちを見ながらご飯が食べれるなんて、それだけで私にとってはご馳走です。
 コスタリカに来て初めて食べる食事はこんな感じでした。
 主食の米はインディカ米でパラパラですが、塩味が効いた小豆が混ざっています。その上に目玉焼き。これも塩が効いています。それと、手作りのパンケーキとサワークリーム。素朴な味で何枚でも食べられます。
 ここではじめてコスタリカコーヒーを飲みました。苦いのですが、さっぱりしていて飲みやすいコーヒーです。
 庭で採れたブラックベリーは酸っぱいのですが、何個も食べました。
 この先、ホテルで色々な朝食を食べたのですが、私はここの朝食が一番美味しかったです。



 朝食を食べながら鳥の姿を見ていると、本当にたくさんの鳥が飛んでいてびっくりしました。
 食べて「これはうまい!」とは思わなかったけど、「まずっ」ともならなく、普通に美味しくいただけました。このほかにコーヒーも飲んだのですが、これは今まで飲んだ中でもかなり美味しいコーヒーでした。コスタリカはコーヒーの産地でもあるので、綺麗な景色と鳥たちの鳴き声の中食べる朝食は最高でした!

 ただひとつ気になったのが、何故か運転手さんが食事を一緒に食べていなかったことです。別の場所で食べたのかもしれませんが、朝4時に迎えに来てくれて、長い距離を運転してきてくれたんだから、一緒にご飯を食べたかったなぁと思いました。もし運転手さんの食事代を払えば一緒に食べれたのかな??

 運転手さんにはここで、千歳を出発する前に撮影した雪の様子のビデオを見てもらいました。自分たちは昨日位までこんな雪の世界にいたんだよって。ビデオを見て運転手さんもびっくりしていたようでした。

こんな景色を見ながら朝食。
標高2600m!

名前聞いたけど忘れた。オレンジバード(仮名)
 上の写真左側の灰色と黄色の鳥は、加瀬さんが私たちに「ケツアールのほかに見せたい鳥が2種類いる」と言っていたうちの一羽。名前は完全に忘れました。ここでしか見れないと言っていた様な気がしますが、とにかく珍しい鳥だそうです。そして右の写真はコスタリカにはたくさん生息しているというハチドリ。どちらの写真も加瀬さんのデジスコにて撮影。距離は100m位離れていたと思います。

 ここで朝食にして正解です。こんなにたくさんの鳥をみることができたので。

 朝食を終え、サンホセに移動することになりました。もっとここにいて、もう少ししたら蝶も出てくるだろうから撮影したいなと思っていたのですが、旅行の工程上仕方ありません。それに蝶の写真だってこの先たくさん撮影の機会もあるだろうから、ここで焦ってもしょうがないかと思いました。

 朝はあまり車も走っていませんでしたが、サンホセに戻る道路ではたくさんの車が行きかっていて、数日後にレンタカーを借りて自分で運転するのが恐ろしくなりました。それにしても韓国のヒュンダイがたくさん走っていました。この先中国が進出してきたら、日本車は追い出されるのではないかと加瀬さんが言っていました。とにかく安いんだって。
 
サンホセに戻る途中、車の窓から撮影

 帰りの車の中ではまたもや「北の国から」の話題でした。市内に入ると加瀬さんが「ここがコスタリカで一番有名な売春のホテル」など、色々説明してくれました。コスタリカでは売春を罰する法律がないそうで、コスタリカの観光収入の5%はこういったものだと言っていました。

カゴ屋さん

有名な売春のホテルの玄関

 サンホセに到着したら、今回の旅行を世話してくれたゴジツアーのオフィスで荷物を預け、数時間フリータイムがあります。オフィスはサンホセの中心部にあるため、市内観光でもしながら昼食をとって、その後モンテベルデという場所に車で4時間ほど移動して次のホテルに行く事になります。
 加瀬さんは今回のケツアールツアーだけガイドをしてくれて、ここでお別れする事になっていたようですが、北の国からや水曜どうでしょうの話などで意気投合し、モンテベルデに出発するまでの間、サンホセ市内を案内してくれることになりました。

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